慢性的ないびきは原因として閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)とよばれる状態にある可能性があります。
下記がOSASの主な症状です。
OSASの主な症状
昼間の症状
- 日中の眠気がある
- 朝起きても疲れが取れている感じがしない
- 血圧が高い
- 倦怠感(だるい感じ)がある
- 頭がぼーっとする、重い感じがある
夜間の症状
- いびきをかいているのを指摘されたことがある
- 息が止まる感じがある
- 寝汗をかく
- 寝相が悪い
- 何度もトイレに起きる
OSASでは睡眠下で呼吸が正常にできておらず、
- 低酸素と急激な再酸素化を繰り返す 断続的な低酸素状態
- 無呼吸中の苦しさによる呼吸努力による 胸腔内圧変動
- 脳波上の一過性覚醒による睡眠の分断
がおこります。
心血管への悪影響
なかでも、①の断続的な低酸素状態は虚血再灌流傷害(虚血状態にある臓器、組織に血液再灌流が起きた際に、その臓器・組織内の微小循環において種々の毒性物質の産生が惹起され引きおこされる障害)に類似した病態を示しており、呼吸再開時に観察される急激な再酸素化が活性酸素を産生します。
生体は活性酸素を水まで分解して解毒するシステムを備えていますが、そのシステムを凌駕する量の活性酸素が生成された場合、酸化ストレス状態に陥いってしまいます。酸化ストレス状態はさまざまな炎症性サイトカインを産生し、全身性炎症を引き起こし、また、血管内皮傷害、血管内皮機能障害を経て動脈硬化病変を形成し、心臓血管疾患に至る機序に深く関わってくるとされています。
OSASでは以上の理由から上記のような酸化ストレス状態が毎日起こり、その結果、日に日に全身の血管にダメージを与え、心臓や脳の血管の疾患を発症しやすくなります。
血糖値への悪影響
OSASによって低酸素によるストレス状態が続くと様々なストレスホルモンが分泌され、自律神経が過活動状態になります。
それによる交感神経系の過剰な興奮や、ストレスホルモンの分泌過多により、血糖や血圧の上昇、体脂肪の増加などをきたします。睡眠中に主に分泌される成長ホルモンの分泌も低下するので、筋肉が減って、脂肪が増えやすくなります。
脂肪容積が増えるとインスリン抵抗性が上昇するので、インスリンが効きにくくなってしまい糖尿病を発症しやすくなります。
すでに糖尿病の方は高血糖状態が続くため糖尿病が悪化してしまいます。
睡眠時無呼吸症候群(OSAS)かどうか知るには
OSASの検査には
- 脳波が付いていない「簡易検査」
- 脳波が付いている「精密検査」
があります。
これらの検査では寝ている時の「低呼吸」と「無呼吸」を調べる事が出来ます。OSASの診断のためには、まずご自宅に送られてくるキットで簡易検査を行います。
簡易検査で〈AHI〉(Apnea Hyponea Index)無呼吸低呼吸指数を調べます。AHIというのは1時間にどのくらい無呼吸・低呼吸(呼吸が浅くなること)がおこるかの回数で示されます。
グラフのように、正常の方でも1時間に数回程度なら無呼吸、低呼吸が起こっても問題ありません。
AHIが5以下なら正常、14以下なら軽症、15から29は中等症、30以上は重症と定義されます。
簡易検査で40<AHIであった場合は重度のOSAS(閉塞性睡眠時無呼吸症候群)としてCPAP治療を開始します。
簡易検査で20<AHI<39であった場合は精密検査PSGを行い、CPAP治療が必要かどうか精査します。
簡易検査
簡易型睡眠時無呼吸検査は、鼻センサー、指センサー、動作センサーの3つを用いて「呼吸」「いびき」「SpO2(酸素飽和度)」「脈拍」を測定出来る検査です。コンパクトで装着が簡単なため、ご自宅で行うことができます。この簡易検査で1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数(RDI)を求めることが出来ます。
精密PSG検査
簡易検査に加え、脳波がついた検査です。ご自宅にキットが郵送されてきます。脳波や呼吸、眼球、筋肉の動きなどを記録します。
簡易検査で20<AHI<39であった場合はこの検査をし、CPAP治療が必要かどうか精査します。
当院で診察。現在の症状を聴取し、ご自宅に直接簡易検査のキットが送られてきます。
症状のある方は、まずはご来院いただいて簡易検査にて検査することをお勧めいたします。
OSASの治療
設定でご本人の呼吸にあわせて、圧を自動で調節するオートCPAPという機器を使用します。
検査の結果、適応があれば持続気道陽圧治療(CPAP)が第一選択となります。この装置は、睡眠中に鼻につけたマスクから持続的に空気を流して圧力をかけ、気道を広げて閉塞を防ぐことにより、無呼吸を取り除く治療法です。
健康保険が適応されており、マスクが問題なく使えた場合、昼間の眠気、朝の頭痛、夜間頻尿などの自覚症状が強い患者様ほど、一晩にて劇的な効果が得られます。加えて、OSASに関連した合併症と考えられる高血圧症や心不全の改善なども報告されています。