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時間がないためにクリニックに足を運べず症状が重くなってしまう方を大勢見てきた中で「 症状が重くなる前に食い止めたい 」という思いに至り、開業いたしました。空いたスキマ時間、昼休みや仕事終わり、休みの日にも通えるクリニックです。アクセス良好な改札を出て徒歩0分という立地、予約システムやオンライン問診、院内のデジタル化を進め、診察までスムーズなご案内が可能です。
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院長 伊藤 晴紀
HARUKI ITO


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お役立ちコラム
2026.11.02
糖尿病は何科にかかる?健診で血糖を指摘された後の受診先の目安
健康診断で血糖の高さを指摘され、何科にかかるべきか迷っていませんか。 厚生労働省の調査では20歳以上の男性の16.8%が糖尿病が強く疑われる人にあたり、初期は自覚症状に乏しいとされています。 この記事では、一般内科と専門医の違いや、検査数値に応じた受診の目安を整理します。 当日の検査手順や、仕事と両立して通院を継続できる医院の選び方も詳しく紹介します。 受診基準がわかることで、適切な受診先を冷静に選び、合併症のリスクを遠ざけることにつながるといえます。 糖尿病は何科?まずは内科で相談できる 糖尿病は何科にかかるべきか迷った際は、まず身近な一般内科で相談できます。 健診で血糖の高さを指摘された場合でも、最初から遠くの大きな病院を探す必要はありません。 一般的な内科クリニックであっても、血液検査や尿検査を通して体の状態を詳しく調べられます。 普段から通いやすい地域の診療所に健診結果を持参し、体調や不安を医師に伝えることが健康維持の第一歩といえます。 糖尿病の診療は内科が担当し、かかりつけ医で続けられることも多い 糖尿病の診療は内科が担当し、病状が安定していれば身近なかかりつけ医のもとで治療を続けられます。 日本糖尿病学会でも、症状が落ち着いている場合は一般のかかりつけ医で治療を受けられることが多いと示されています※。 通院時は、血液検査で血糖値や過去1〜2カ月の血糖状態を反映するHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)を測定します。 定期的な数値の確認とあわせて合併症の兆候がないかを把握し、安定した状態を維持することが治療の基本と考えられています。 身近なかかりつけ医で通院を続ける利点は、以下のとおりです。 自宅や職場の近くにあり無理なく通院を継続できる 高血圧や脂質異常症といった全身の生活習慣病もあわせて管理できる より精密な検査や治療が必要になった段階で専門医を紹介してもらえる 糖尿病の治療は長期間にわたる生活習慣の改善が欠かせません。 通いやすく相談しやすいクリニックを選ぶことが、治療を中断させないための土台になるといえます。 糖尿病内科・糖尿病専門医とは何が違うのか 糖尿病内科・糖尿病専門医とは、糖尿病に関する深い専門知識を持ち、専門性の高い治療や療養指導を担当する医師および診療科です。 一般内科が幅広い病気の初期対応や安定期の管理を担うのに対し、専門医は治療方針の調整や合併症の専門管理に特化しています。 日本糖尿病学会の専門医は、学会が定めた研修と審査をクリアした医師であり、資格は5年ごとに更新審査が行われます※。 専門医は医療チームのリーダーを務めるだけでなく、地域のかかりつけ医と連携して診療への助言を行う役割も担っています。 一般の内科と糖尿病専門医の違いを下表にまとめました。 比較項目 一般内科(かかりつけ医) 糖尿病内科・糖尿病専門医 主な役割 ・生活習慣の改善指導や初期診断・病状安定期の定期的な血糖管理 ・血糖コントロール困難時の治療調整・進行した合併症の精密な管理 担当医師の背景 幅広い病気を総合的に診る内科医 学会基準の研修を修了した専門医(5年ごとに更新) 通いやすさの目安 住宅街や駅前など身近に多く通院しやすい 総合病院や専門クリニックが多く予約制が中心 専門医への受診を希望する場合は、直接総合病院へ行くのではなく、かかりつけ医に相談して紹介状をもらう受診形態が一般的です。 各地の専門医や所属する施設名は、日本糖尿病学会の公式ホームページで確認できる体制が整えられています※。 日本糖尿病学会が示す、かかりつけ医から専門医への紹介が検討される5つの状況 日本糖尿病学会が示す、かかりつけ医から専門医への紹介が検討される5つの状況とは、専門的な治療を要する医学的基準です※。 病状に応じて適切な医療機関につなぐため、日本糖尿病学会と日本医師会により明確なガイドラインが策定されています※。 紹介が推奨される具体的な状況は、次のとおりです。 血糖コントロールの改善や治療調整 お薬を使っても目標に届かない状態が3カ月以上続く場合や、治療の変更に悩む場合です。 体内でインスリンを作る力(内因性インスリン分泌)が著しく衰えている方や、重い低血糖を繰り返す方、妊娠中の方も対象になります。 なお、血糖コントロール目標(HbA1c)は、血糖正常化を目指す際は6.0%未満、合併症予防は7.0%未満、治療強化が困難な場合は8.0%未満とされています。 教育入院 糖尿病と診断された直後などで、食事や運動、お薬の服用、インスリン自己注射の手技などを外来診療だけでは十分に習得できない場合です。 短期間入院して集中的に生活習慣や自己管理の方法を学びます。 慢性合併症の精密管理 高血糖が続くことで血管や神経が傷つき、網膜症(目の障害)や腎症(腎機能の低下)、神経障害がみられる場合です。 狭心症や心筋梗塞、脳卒中、足の血流障害といった大血管の病気のリスクが高い、または発症している際も専門的な治療が求められます。 急性合併症への緊急処置 インスリン不足により血液が極度の酸性に傾く糖尿病ケトアシドーシスや、血糖値が300mg/dL以上で著しい脱水症状がある場合です。 命に関わる危険性があるため、迅速な入院処置や緊急治療が行われます。 手術前後の厳格な血糖管理 予定している手術や緊急手術を控えており、術前術後に安全な血糖管理が必要とされる場合です。 専門医療機関で治療方針が定まった後は、再び地域のかかりつけ医で治療を続ける「逆紹介」や、両方の医師が協力して診る「併診」も行われます※。 病状に合わせて無理なく治療を続けられる連携体制が整っているといえます。 健診結果の数値から判断する受診の目安 健診結果の数値から判断する受診の目安は、空腹時血糖値と過去1〜2カ月の血糖状態を反映するHbA1cによって段階的に区分されます。 正確な血糖の判定には、絶食10時間以上の空腹時血糖またはHbA1cの値が用いられます※。 自覚症状が現れにくい初期のうちに数値を正しく把握し、判定に応じた行動をとることが大切です。 厚生労働省が定める保健指導判定値と受診勧奨判定値 厚生労働省が定める保健指導判定値と受診勧奨判定値は、糖尿病の早期発見と合併症の重症化を防ぐために設定された医学的基準です※。 判定区分に応じた検査値と推奨される対応を、下表にまとめました。 判定の区分 空腹時血糖(絶食10時間以上) HbA1c 推奨される対応 保健指導判定値 100〜109mg/dL 5.6〜5.9% ・生活習慣の改善に取り組む・リスクの重複等があれば精密検査 精密検査推奨 110〜125mg/dL 6.0〜6.4% ・生活習慣の改善に取り組む・精密検査を推奨 受診勧奨判定値 126mg/dL以上 6.5%以上 定期的に医療機関を受診していなければすぐに受診 受診勧奨判定値を超えた場合でも、直ちに飲み薬や注射などの治療が始まるわけではありません※。 この判定は、再検査や生活習慣の見直しを含めて医療機関での管理が必要な状態を意味していると考えられています※。 数値を不安に感じて受診をためらわず、まずは医師の診察を受けることが推奨されます。 空腹時血糖126mg/dL以上・HbA1c 6.5%以上は早めに医療機関へ 空腹時血糖126mg/dL以上・HbA1c 6.5%以上は早めに医療機関へ受診すべき糖尿病が強く疑われる水準です。 厚生労働省の国民健康・栄養調査によると、糖尿病が強く疑われる人の割合は20歳以上の男性で16.8%、女性で8.9%にのぼります※。 過去10年間で男女ともに大きな増減はなく、40代以降から年代が上がるにつれて割合が高まります※。 年代別の割合は次のとおりです。 男性:40代6.3%、50代11.1%、60代15.7%、70歳以上26.2%※ 女性:40代4.6%、50代6.2%、60代10.1%、70歳以上13.7%※ この段階では自覚症状を感じない場合も多くみられます。 しかし、高い血糖値を放置すると細い血管や太い血管が傷つき、網膜症や腎症、神経障害のほか、心筋梗塞や脳梗塞などの合併症を起こす危険性が高まると考えられています※。 医療機関では血糖の再確認とともに、合併症を早期に発見するため下記の検査が進められます。 糖尿病網膜症の有無を調べる眼底検査※ 腎臓の働きを詳しく調べる血液検査や尿検査※ 食事内容や運動頻度を確認する生活習慣指導 重篤な病気を未然に防ぐためにも、未治療の段階で速やかに内科を受診することが望ましいといえます。 HbA1c 6.0〜6.4%や5.6〜5.9%は精密検査と生活習慣の見直しを HbA1c 6.0〜6.4%や5.6〜5.9%は精密検査と生活習慣の見直しを行い、本格的な糖尿病への移行を食い止めるべき段階です。 この数値範囲は「糖尿病予備群」や「境界型」と呼ばれ、血糖値を下げるインスリンの働きが弱まり始めている状態を示していると考えられています。 厚生労働省のプログラムに基づく具体的な対応基準を、下記に整理します。 HbA1c 6.0〜6.4%(空腹時血糖110〜125mg/dL):生活習慣の改善に取り組みつつ、精密検査の受診が推奨される※ HbA1c 5.6〜5.9%(空腹時血糖100〜109mg/dL):生活習慣を見直し、血圧や脂質など他のリスクが重なる場合は精密検査を受ける※ 自覚症状がないため放置されがちですが、血管への微細な負担はすでに生じています。 すい臓の細胞が疲弊しきる前に専門的な助言を受けることが、将来の健康を保つ鍵になるといえます。 口の渇き・多尿・体重減少など自覚症状がある場合の判断 口の渇き・多尿・体重減少など自覚症状がある場合の判断としては、健診の判定区分にかかわらず速やかに医療機関を受診することが原則です。 通常、糖尿病の初期には自覚症状がほとんど現れません。 明らかな体の変化に気づく段階では、すでに血糖値が著しく高い状態で推移している可能性があります。 受診を急ぐべき代表的なサインは、以下のとおりです。 水分をいくら飲んでも喉の渇きがおさまらない トイレに行く回数や1回の尿量が明らかに増えた 普通に食事を摂っているにもかかわらず体重が減っていく 休息をとっても抜けない強い倦怠感や疲労感が続く 血糖値が過剰に高くなると、体は余分な糖を尿と一緒に排出しようとするため尿量が増え、脱水状態に陥って喉が渇きます。 さらに、血液中のブドウ糖をエネルギーとしてうまく活用できない状態に陥ると、体は筋肉や脂肪をエネルギー源へと変えようとします。 その結果として、特別な運動や食事制限をしていないにもかかわらず、急激な体重減少が起こる仕組みです。 体調の急変を防ぐためにも、次回の健康診断を待つことなく、すぐに内科を受診してください。 医療機関で糖尿病と診断されるまでの流れ 医療機関で糖尿病と診断されるまでの流れは、採血による血糖値とHbA1cの測定値を照らし合わせ、段階を踏んで慎重に判断されます。 健診の簡易検査と異なり、医療機関では腕の静脈から採血した血漿(血液から血球を除いた液体成分)の糖濃度を正確に測定します。 食事の時間や体調による一時的な数値の変動を除外するため、手順に沿った医学的な評価が必要とされています。 そのため、健診で高値を指摘された場合でも、初回の検査だけで直ちに病名が確定するわけではありません。 一人ひとりの体の状態を正しく見極めるため、再検査を含めた丁寧な確認が行われると考えられています。 糖尿病型と判定される血糖値とHbA1cの基準 糖尿病型と判定される血糖値とHbA1cの基準は、早朝空腹時や食後の血糖値、過去の平均血糖を反映する指標により明確に定められています。 日本糖尿病学会の診断基準では、腕の静脈血漿を用いて数値を評価する取り決めです※。 血糖値は食事の前後で大きく変動するため、採血した時間帯や絶食の条件ごとに判定値が細かく分かれています。 一方のHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)は、赤血球の寿命を反映し、過去1〜2カ月間の平均的な血糖状態を示す指標とされています。 当日の食事による一時的な影響を受けにくいため、血糖値と組み合わせることで正確な評価ができるといえます。 糖尿病型と判定される各検査の基準値を、下表にまとめました。 検査項目 判定条件の目安 糖尿病型となる基準値 早朝空腹時血糖値 前夜からの絶食(10時間以上) 126mg/dL以上 75g経口ブドウ糖負荷試験(2時間値) 糖入りの検査液を飲んで2時間後 200mg/dL以上 随時血糖値 食事の時間を決めずに採血 200mg/dL以上 HbA1c(NGSP値) 過去1〜2カ月の平均血糖 6.5%以上 75g経口ブドウ糖負荷試験とは、甘いブドウ糖液を飲み、一定時間ごとに採血して体の糖処理能力を調べる詳しい検査です※。 上記の4項目のうち、いずれか1つでも基準を満たす場合に「糖尿病型」と判定されます※。 ただし、糖尿病型と判定された段階は強い疑いがある状態を指し、確定診断にはもう一段階の確認が必要と考えられています。 別の日の再検査で2回確認する原則と、1回で診断される条件 別の日の再検査で2回確認する原則と、1回で診断される条件は、一時的な血糖の乱れを除外し、正しく診断するために設けられています。 血糖値は精神的な緊張や体調不良、直前の食事内容によって一時的に跳ね上がる可能性があります。 そのため、日本糖尿病学会の基準では、原則として別の日に行った再検査でも糖尿病型を確認して初めて診断を下します※。 ただし、HbA1cのみを別の日に2回繰り返して高値であっても、血糖値の異常がなければ糖尿病とは診断できない決まりです※。 一方で、初回の検査のみで確定診断に至る例外的な条件も明確に定められています。 血糖値が糖尿病型であり、かつ特定の所見がみられる場合は、1回の検査で糖尿病と診断できるとされています※。 血糖値が糖尿病型であることに加え、1回で診断が確定する条件は以下のとおりです。 同時に採血したHbA1cが6.5%以上を示す場合※ のどの渇きや多尿、急激な体重減少といった典型的な症状がある場合※ 眼科での診察により明らかな糖尿病網膜症が確認されている場合※ 血糖値とHbA1cが同時に高値であれば、慢性的な高血糖が続いている証拠となるため再検査を待たずに治療方針が立てられます。 典型的な自覚症状や網膜症がある場合も、すでに体に強い負担がかかっている状態と判断されるためです。 初回の検査で条件を満たさず判断がつかない際は、時期を改めて再検査を行い、慎重に経過が追われるといえます※。 境界型と言われた場合の経過観察と再検査 境界型と言われた場合の経過観察と再検査は、本格的な糖尿病への進行を食い止め、全身の血管を守るために行われます。 血糖の判定には、糖尿病型だけでなく「正常型」と「境界型」を含めた3つの区分が設けられています。 正常型とは、早朝空腹時血糖値が110mg/dL未満、かつ負荷試験2時間値が140mg/dL未満の状態とされています※。 この正常型と糖尿病型のどちらにも当てはまらない範囲が「境界型(糖尿病予備群)」です※。 境界型の段階では自覚症状がほとんど現れません。 しかし、正常型より糖尿病へ進む危険性が高く、動脈硬化による血管の障害も比較的起こりやすい状態とされています※。 すい臓から出るインスリン(血糖を下げるホルモン)の分泌低下や働きの鈍さがすでに生じていると考えられています。 境界型と判定された場合に推奨される対応を、下記に整理します。 食事の工夫や運動の習慣化など生活習慣の改善に取り組む 医師の指示に従い、時期をおいて血液検査を受け直す※ 医師が必要と判断した場合は、糖の処理能力を詳しく調べる75g経口ブドウ糖負荷試験を受ける 自覚症状がない段階であっても放置せず、定期的に通院して体の変化を追うことが将来の健康を守る土台といえます。 「まだ予備群だから」と放置しないための医学的根拠 「まだ予備群だから」と放置しないための医学的根拠は、自覚症状がない初期段階から体内のインスリン分泌機能が衰え始め、糖尿病への進行や血管への悪影響が静かに進む点にあります。 健康診断で血糖の高さを指摘されても、普段どおり過ごせるため受診を先延ばしにする方は少なくありません。 しかし、血糖値を下げるホルモンであるインスリンを分泌する膵臓(すいぞう)は、予備群の段階ですでに負担を受けて疲弊し始めていると考えられています。 自覚症状が現れない時期であっても、高めの血糖によって全身の血管は徐々にダメージを受け続けます。 進行を食い止めるためには、異常を指摘された段階で内科を受診し、ご自身の血糖状態を正確に把握することが重要といえます。 HbA1c 5.6%以上でも5年以内に糖尿病へ進む割合 HbA1c 5.6%以上でも5年以内に糖尿病へ進む割合は、日本人を対象とした大規模な追跡調査により、数値の上昇に伴って発症リスクが段階的に高まることが実証されています※。 国内でHbA1c 6.5%未満の5万2,781人を平均3.7年にわたり追跡した研究があります※。 その調査では、最初の検査値が高い人ほど、5年以内に糖尿病を発症する割合が上昇することが示されました※。 初回の検査値と5年以内の発症リスクの関係を下表にまとめました。 初回のHbA1c値 5年以内の糖尿病発症率 5.5%以下 3.6% 5.6〜5.7% 8.9% 5.8〜5.9% 13.8% 6.0〜6.1% 27.5% 6.2〜6.3% 51.6% 6.4% 67.8% HbA1cが5.6%を超えると発症率は着実に上がり、6.0%を超えると危険性は急激に跳ね上がります。 とくに6.2%以上の層では、経過観察の1年目から発症率が急増することが明らかになっています※。 「基準値よりわずかに高いだけ」と自己判断せず、速やかに内科で詳しい検査を受けることが重要と考えられています。 糖尿病予備群は年間5〜10%が糖尿病に進展する 糖尿病予備群は年間5〜10%が糖尿病に進展するという医学的データがあり、適切な対策を怠ると病状が着実に進行しやすい状態とされています※。 予備群とは、血糖値が正常より高いものの糖尿病の診断基準には至らない段階を指します。 この段階ではインスリンの効き目が悪くなり、膵臓の分泌機能も低下し始めていると考えられています。 生活を見直さないまま過ごすと膵臓が消耗し、高血糖が定着してしまう恐れがあります。 予備群と判定された方の1年ごとの経過を下記に整理します。 何も対策を行わない場合:年間およそ5〜10%が糖尿病へと移行する※ 一方で、同じく年間およそ5〜10%は正常な血糖値へ戻るとも報告されている※ 予備群の時期は、将来重篤な病気に至るか健康を取り戻せるかの大きな分かれ道といえます。 自覚症状がないからと受診を先延ばしにせず、早めに生活習慣の是正を進めることが大切です。 早期の生活習慣改善で発症リスクを4〜7割下げられる 早期の生活習慣改善で発症リスクを4〜7割下げられることは、国内外の大規模な臨床試験によって医学的に実証されています※。 予備群の段階は、日常の食事や運動を見直すことで病気の進行を食い止められる重要な時期です。 適切な生活改善を行うと、低下しかけたインスリンの働きを高め、膵臓への負担を和らげられると考えられています。 国内外の代表的な大規模研究における予防効果は、以下のとおりです。 アメリカの予防プログラム(DPP):生活習慣の改善により3年間で発症リスクが58%低下※ 中国の大慶研究:食事や運動の指導により20年間の長期追跡で発症リスクが43%低下※ これらの報告は、早期の生活介入が長期間にわたって効果を発揮することを示しています。 予備群であれば、お薬に頼らず生活習慣の工夫だけで血糖の安定を目指せる可能性があります。 健康診断で指摘を受けた際は自己判断で放置せず、まずは地域の医療機関へ相談することが推奨されるといえます。 初めて受診するときの準備と当日の検査 初めて受診するときの準備と当日の検査は、必要な持ち物をそろえて検査の仕組みを知っておくことで落ち着いて進められます。 健康診断で血糖の高さを指摘されると、どのような検査を受けるのか不安に感じる方は少なくないといえます。 初診時は問診や採血、採尿などを通じて、現在の体の状態を医学的に詳しく確かめます。 検査の意図や当日の流れを事前に把握しておくと、受診時の心理的な負担を和らげられると考えられています。 健診結果票とお薬手帳を持参する 健診結果票とお薬手帳を持参することは、医師がこれまでの病状の推移や服薬状況を迅速に把握するために欠かせません。 健診結果票には血糖値だけでなく、血圧や脂質、肝機能や腎機能といった全身の検査データが網羅されていると考えられています。 糖尿病は単独で発症するだけでなく、高血圧や脂質異常症を伴うケースが多いため、全身の状態を総合的に判断することが大切といえます。 直近の結果だけでなく、過去数年分の結果票があれば、数値がいつ頃から悪化し始めたのかという経過も確認できます。 普段から飲んでいるお薬やサプリメントの情報を伝えることも、安全な治療方針を決めるうえで重要とされています。 服用中のお薬の種類によっては血糖値に影響を与える場合があり、新しく処方するお薬との飲み合わせも確認しなければなりません。 受診当日に持参したい持ち物は次のとおりです。 健康診断の結果票(可能であれば過去数年分) お薬手帳(服用中のお薬やサプリメントの情報) 健康保険証またはマイナンバーカード 気になる自覚症状や生活習慣をまとめたメモ 事前に喉の渇きや尿の回数、体重の増減などをメモしておくと、診察時の問診がスムーズに進む可能性があります。 空腹時血糖は絶食10時間以上が目安、HbA1cは食後でも測れる 空腹時血糖は絶食10時間以上が目安、HbA1cは食後でも測れるという特徴を知っておくと、受診のタイミングを柔軟に選べます。 健康診断の血糖検査では、食事による血糖値の上昇を除外するため、10時間以上の絶食を経た空腹時血糖が測定される仕組みです※。 一方で、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)は、血液中の赤血球とブドウ糖が結合した割合を反映する検査項目とされています※。 赤血球の寿命に基づき過去1〜2カ月の平均的な血糖状態を示すため、直前の食事による影響をほぼ受けないと考えられています※。 空腹時血糖とHbA1cの主な特徴の違いを下表にまとめました。 検査項目 食事による影響 測定できる内容 受診時の利点 空腹時血糖 ・10時間以上の絶食が必要・直前の食事で数値が変動する ・採血した時点の血糖値・基礎的なインスリンの分泌状態 ・朝一番の受診に適している・健診と同じ条件で比較できる HbA1c ・食事の影響をほぼ受けない・食後すぐの採血でも測定可能 ・過去1〜2カ月の平均血糖値・長期的な血糖管理の状態 ・仕事帰りなど日中の受診が可能・当日の食事時間を気にせず受診できる 平日の仕事帰りなど絶食が難しい時間帯であっても、HbA1cを測定すれば病状の評価を進められます。 厚生労働省の基準でも、正確な血糖の判定には絶食10時間以上の空腹時血糖またはHbA1cが用いられると示されています※。 受診勧奨判定値(空腹時血糖126mg/dL以上またはHbA1c 6.5%以上)に達していても、直ちに服薬が始まるわけではありません※。 再検査や生活指導を含めた管理を始める合図ですので、「食事をとったから」と先延ばしにせず受診することが大切といえます※。 血液検査・尿検査に加えて眼底検査や腎機能の確認が必要な理由 血液検査・尿検査に加えて眼底検査や腎機能の確認が必要な理由は、自覚症状が出にくい糖尿病の三大合併症を早期に発見するためです。 血液中にあふれた余分なブドウ糖は、全身を巡る微細な毛細血管を少しずつ傷つけると考えられています。 細い血管が集中している「目(網膜)」「腎臓」「手足の末梢神経」はとくに障害を受けやすく、初期の段階では自覚症状がほとんど現れません。 気づかないうちに病状が進行する恐れがあるため、未治療で受診勧奨判定値を超える場合は、初診時から全身の合併症を調べることが推奨されています※。 三大合併症を調べる主な検査と確認内容を下記に整理します。 眼底検査(眼科連携):目の奥にある網膜の血管を観察し、出血などの網膜症の兆候を調べる 腎機能検査(採血・採尿):尿中アルブミンや血液中のクレアチニンを測定し、腎臓のろ過機能を調べる 神経障害の診察(問診・診察):手足のしびれやチクチク感、感覚の鈍さや腱反射の反応を調べる 日本糖尿病学会の紹介基準でも、網膜症や腎症などの慢性合併症が認められる場合は、専門医による精密な管理が推奨されています※。 HbA1cを合併症予防の目標値である7.0%未満に保つことが、将来の視力障害や人工透析を防ぐ土台になるといえます※。 内科での定期的な採血や採尿とあわせて、眼科での定期的な眼底検査を並行して受けることが重要と考えられています。 働きながら通いやすい受診先の選び方と当院のご案内 働きながら通いやすい受診先の選び方と当院のご案内は、生活リズムを崩さずに通院を継続できる環境と、病状に応じた適切な連携体制を確認することです。 糖尿病の治療は長期間に及ぶため、無理なく通い続けられる医療機関を選ぶ視点が欠かせません。 病状が安定していれば、身近なかかりつけ医のもとでも十分に通院治療を続けられます※。 日常の診療では、血糖値やHbA1cの数値を定期的に確認し、合併症の兆候を見逃さない管理が重要とされています※。 より詳しい検査や治療の調整が必要になった際は、かかりつけ医から専門医を紹介してもらう流れが一般的です※。 日本糖尿病学会の専門医は、5年ごとの更新審査を受け、かかりつけ医への診療助言や地域連携を担っています※。 通勤ルートや生活圏に合わせ、専門機関とも連携のとれた通いやすいクリニックを選ぶことが大切といえます。 平日夜間や土日祝に診療している内科を選ぶ 平日夜間や土日祝に診療している内科を選ぶことは、受診の先延ばしを防ぎ、自覚症状のない初期から治療を中断させないために有効です。 糖尿病は自覚症状に乏しいため、仕事の忙しさを理由に通院を中断してしまう方が少なくありません。 平日の日中しか開いていない医療機関では受診の予定が立てにくく、数値の悪化を放置する原因になります。 夜間や休日の診療枠が用意されていれば、お仕事の都合を優先しながら無理のない通院スケジュールを維持できます。 働きながら通院しやすいクリニックを見極める主な基準を、下記に整理します。 会社帰りにも立ち寄れる平日夜間の遅い時間まで診療を受け付けているか 週末の空いた時間を利用できる土曜日や日曜日、祝日にも診療しているか 最寄り駅から徒歩圏内にあり、雨天などの悪天候でも移動の負担が少ないか スマートフォンやWEBから手軽に受診予約や日程変更ができるか 通院にかかる心理的・身体的な負担を減らすことは、治療への意欲を保つうえでも効果的と考えられています。 生活動線の中で立ち寄りやすい医療機関を確保することが、将来の合併症リスクを遠ざける土台になるといえます。 クリニックファーストエイドの内科での対応と診療時間 クリニックファーストエイドの内科での対応と診療時間は、働く世代の方が生活リズムを保ちながら受診を続けられる体制を整えています。 当院の内科では、健診で血糖の数値を指摘された方の初期対応をはじめ、高血圧や脂質異常症などの生活習慣病を幅広く診療します。 当院の診療時間やアクセスなどの基本情報を、下表にまとめました。 項目 診療体制の詳細 診療時間(平日) 9:30〜14:30 / 16:00〜21:00 診療時間(土日祝) 9:00〜13:00 / 14:00〜18:00 休診日 なし(土日祝も診療) アクセス ・JR神田駅より徒歩0分・駅から至近で通いやすい立地 平日は夜21時まで、土日や祝日も夕方18時まで診療を行っています。 受付は各診療終了時刻の15分前まで承っています。 ご予約はお電話のほか、WEB予約や公式LINE(24時間受付)からも承っています。 健診結果票やお薬手帳をお持ちのうえ、ご都合の良い時間帯にお気軽にご相談ください。 まとめ 健康診断で血糖の高さを指摘された際は、大きな病院を探す前にまず身近な一般内科を受診するのが適切な目安といえます。 糖尿病の初期は自覚症状に乏しいものの、放置すると毛細血管が傷つき合併症を引き起こす可能性があります。予備群の段階から食事や運動習慣の改善に取り組むことで、病気の進行を食い止める効果が期待できると考えられています。 将来の健康を守るためにも自己判断で先延ばしにせず、健診結果票を持参して通いやすい地域のクリニックへご相談ください。 参考文献 日本糖尿病学会「糖尿病診断基準(国際標準化対応版 2012年)」 厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」 厚生労働省「令和5年国民健康・栄養調査結果の概要」 日本糖尿病学会「糖尿病専門医とは」 日本糖尿病学会「かかりつけ医から専門医・専門医療機関への紹介基準」 Kawahara T, et al. Incidence of Type 2 Diabetes in Pre-Diabetic Japanese Individuals Categorized by HbA1c Levels: A Historical Cohort Study. PLoS One. 2015;10(4):e0122698. Tabák AG, Herder C, Rathmann W, Brunner EJ, Kivimäki M. Prediabetes: a high-risk state for diabetes development. Lancet. 2012;379(9833):2279-2290.
2026.11.02
HbA1cが5.6と言われたら|健診の指摘後に内科で確認すること
健康診断でHbA1cが5.6%と指摘され、糖尿病ではないかと不安を感じていませんか。基準値の5.5%をわずかに超えた段階では自覚症状がなく、対応に迷う人は少なくないといえます。 厚生労働省の基準において、5.6%は生活改善を促す保健指導判定値とされています。この記事では、日本人約5万人のデータが示す発症リスクや内科で確認すべき項目を整理します。 数値の背景にあるリスクを把握できれば、今取るべき行動がわかり、基準値へ引き戻す対策につながると考えられます。 HbA1c 5.6%は糖尿病ではないが、将来のリスクを知らせる数値 HbA1c 5.6%という数値は、現時点で糖尿病ではないものの、将来的な発症リスクが高まり始めている警戒ラインといえます。 健診で5.6%と判定されても、直ちに内服薬による治療が始まる段階ではありません。 厚生労働省の基準では、5.5%以下が基準範囲とされ、5.6%からは生活習慣の改善を促す保健指導判定値に設定されています※。 自覚症状が出にくい時期であるため、早期に食事や運動を整える姿勢が大切と考えられています。 貧血や鉄欠乏、腎臓の病気、妊娠などがあるときは、血糖値と関係なく数値が変動する可能性があります。 健診結果を受け取った際は、体調やお薬手帳の内容を医師に共有することが望まれます。 HbA1cは過去1〜2か月の血糖の平均を示す指標 HbA1cは、採血をした日から過去1〜2カ月の血糖の平均的な高さを反映する指標です。 血液中の赤血球にあるヘモグロビンに、ブドウ糖がどれくらいの割合で結合しているかを測定しています。 血糖値の判定は、正確には10時間以上の絶食を経た空腹時血糖値や、このHbA1cによって行われます※。 日々の食生活や運動の状況が数値に現れるため、血糖状態を正しく評価する上で欠かせない検査といえます。 検査の主な特徴は次のとおりです。 直前の食事や運動による一時的な影響を受けにくく、普段の状態を客観的に把握できる 正常域を超えて高くなるほど、血管が傷ついて心筋梗塞や脳梗塞などの合併症を起こしやすくなる※ 糖を処理する能力が少し衰えた初期段階を見落とす場合がある※ 耐糖能異常(たいとうのういじょう)とは、食事の後に上がった血糖値を正常に戻す力が低下した状態を指します。 HbA1cが基準値近くであっても、食後の血糖値だけが急上昇している隠れた異常までは捉えきれないケースがあるとされています。 糖尿病の目安である6.5%と5.6%の違い 糖尿病の目安である6.5%と5.6%の違いは、糖尿病型と確定される診断基準値に達しているかどうかにあります。 日本糖尿病学会の基準では、HbA1cが6.5%以上のときに糖尿病型と判定されます※。 実際の診断ではHbA1c単独の再検査で確定することはなく、別の日に行った血糖値の測定などを合わせて総合的に判断します※。 これに対して5.6%は、確定基準である6.5%には届いていないものの、正常の上限付近に位置しており、注意深く経過を見る必要がある数値といえます。 2つの数値の違いを下表にまとめました。 項目 HbA1c 5.6% HbA1c 6.5%以上 診断上の位置づけ 将来の発症リスクが高い段階 糖尿病型(早急な受診が推奨される状態) 自覚症状 自覚症状はほとんど現れない 喉の異常な渇きや多尿などが生じる場合がある 主な対応 ・生活習慣の見直しを進める・必要に応じて内科で相談する ・医療機関で精密検査を受ける・医師の指導のもとで治療を開始する 5.6%の段階では体調に違和感を覚えないケースが大半です。 症状がない時期に対策を始めることで、糖尿病への移行を防げる可能性が高まります。 日本糖尿病学会が示す「将来糖尿病の発症リスクが高いグループ」 日本糖尿病学会が示す「将来糖尿病の発症リスクが高いグループ」とは、HbA1cが5.6〜5.9%の範囲にあり、糖尿病ではないものの将来の発症リスクが高い段階を意味します※。 空腹時の血糖値が100〜109mg/dLである正常高値の人も、このグループに含まれます※。 すぐに糖尿病と診断されるわけではありませんが、糖を代謝する力が徐々に低下し始めているサインと考えられます。 同学会では、糖の処理能力を詳しく調べるため、ブドウ糖の入った検査液を飲む75g経口ブドウ糖負荷試験を行うことが望ましいとしています※。 特に注意が必要な要因は下記に整理します。 高血圧や脂質異常症など動脈硬化を早める病気がある体重が増加傾向にあり肥満が認められる 血縁のある家族や親族に糖尿病の人がいる 正常型と糖尿病型の中間にあたる境界型は、糖尿病へ移行しやすいだけでなく、動脈硬化性の合併症リスクも比較的高いと報告されています※。 HbA1cが5.6%と判定された場合は、血圧や体重といったほかのリスク因子が重なっていないか確かめることが重要です。 厚生労働省の判定基準から見るHbA1c 5.6%の位置づけ 厚生労働省の判定基準から見るHbA1c 5.6%の位置づけは、すぐに治療が必要な病気の段階ではありません。 一方で、将来の生活習慣病を予防するために保健指導が始まる重要な目安となる数値です。 国の「標準的な健診・保健指導プログラム」では、10時間以上の絶食を経た空腹時血糖やHbA1cを正確な判定の指標としています※。 この基準において5.6%という数値は、正常域から注意段階へと移り変わる境目に位置づけられていると考えられます。 自覚症状がない段階だからこそ、健診での指摘を機に日頃の生活リズムを見直すきっかけにすることが大切といえます。 5.5%以下の基準範囲と5.6%からの保健指導判定値 5.5%以下の基準範囲と5.6%からの保健指導判定値は、糖尿病の発症を防ぐために国が定めた境界線です。 動脈硬化による重い合併症を未然に防ぐ目的で設定されています。 HbA1cは正常域を超えて高くなるほど、網膜症や腎症、神経障害といった三大合併症を発症するリスクが高まると報告されています※。 心筋梗塞や脳梗塞など、太い血管が詰まる病気を悪化させる要因にもなり得ます※。 そのため国は、深刻な血管病変が起きる前の段階で生活習慣の改善を促せるよう、5.6%を保健指導の開始値に定めています。 厚生労働省が定める健診の判定区分を下表にまとめました。 判定区分 HbA1c(NGSP) 絶食10時間以上の空腹時血糖 主な健康状態の目安 基準範囲 5.5%以下 99mg/dL以下 健康的な血糖状態が保たれている範囲 保健指導判定値 5.6〜6.4% 100〜125mg/dL ・生活習慣の乱れを見直す段階・動脈硬化や糖尿病の発症リスクに注意が必要 受診勧奨判定値 6.5%以上 126mg/dL以上 ・糖尿病型と判定される水準・医療機関での詳しい検査や治療が推奨される このように、5.6%は「健康な状態」から「生活を見直すサイン」へと切り替わる重要なポイントといえます。 5.6〜5.9%・6.0〜6.4%・6.5%以上で変わる推奨される対応 5.6〜5.9%・6.0〜6.4%・6.5%以上で変わる推奨される対応は、将来の発症リスクや精密検査の緊急度に応じて段階的に設定されています。 国の基準において、未治療の人が受けるべき対応の違いを次のとおり整理しました。 数値区分 判定上の位置づけ 推奨される対応の目安 5.6〜5.9% 保健指導判定値(軽度) ・食事や運動などの生活習慣を改善する・リスクの重複があれば精密検査を検討する 6.0〜6.4% 保健指導判定値(中等度) ・生活習慣の改善を進める・医療機関での精密検査を受けることが推奨される 6.5%以上 受診勧奨判定値 ・速やかに内科などの医療機関を受診する・確定診断のための精密検査を受ける 日本糖尿病学会の報告でも、5.6〜5.9%は将来糖尿病を発症するリスクが高いグループと位置づけられています※。 この段階で肥満がある場合は、国の特定保健指導の対象となり、専門職による生活支援を受けられる可能性があります※。 さらに、高血圧や脂質異常症、親族に糖尿病の人がいる場合は、糖の処理能力を調べる「75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)」の実施が望ましいとされています※。 6.0〜6.4%は同学会が「現在糖尿病の疑いが否定できないグループ」としているため、5.6〜5.9%の段階で対策を始めることが進行を防ぐカギとなります※。 HbA1cだけでは軽い血糖の異常を見落とすことがある HbA1cだけでは軽い血糖の異常を見落とすことがある理由は、軽度の耐糖能異常(血糖値を下げる力の衰え)を捉えにくいためです※。 初期のわずかな変化を検出する検査としては、感度が十分ではないとされています※。 HbA1cは過去1〜2カ月の平均的な血糖状態を示す便利な指標ですが、平均化されることで食後の急激な高血糖が数値に反映されにくい弱点があります。 糖尿病の確定診断では、HbA1c単独の反復測定だけで判定することはなく、別の日に測定した血糖値などを組み合わせて総合的に判断されます※。 見落としが生じやすい背景や注意すべき要因を下記に整理します。 食後の短い時間だけ血糖値が跳ね上がる「食後高血糖」が平均値に埋もれてしまう 空腹時血糖が100〜109mg/dLの「正常高値」も、将来の発症リスクが高いグループに含まれている※ 貧血や鉄欠乏など赤血球のターンオーバーに変化があると数値がずれる可能性がある 耐糖能の低下が初期段階にあると平均値としての異常が現れにくい 検査値が5.6%にとどまっているからといって自己判断で安心せず、健診結果全体の数値を医師と一緒に確認することが大切と考えられています。 日本人約5万人の研究データが示す5年後の発症リスク 日本人約5万人の研究データが示す5年後の発症リスクは、健診時のHbA1c値のわずかな上昇でも明確な差となって現れます。 この調査は、日本人52,781人を対象に電子カルテのデータを用いて平均3.7年追跡した研究です※。 解析の結果、検査時の数値が高くなるにつれて発症率が段階的に跳ね上がることが確認されました※。 自覚症状がない段階であっても、検査結果に隠れた将来の病気のリスクを正しく読み取ることが大切といえます。 HbA1c 5.5%以下と比べた5.6〜5.7%の発症率 HbA1c 5.5%以下と比べた5.6〜5.7%の発症率は、5年間の追跡で約2.5倍に高まることが示されています※。 基準範囲とされる5.5%以下のグループにおける5年以内の発症率は、3.6%にとどまります※。 一方、わずか0.1%高い5.6〜5.7%のグループでは、発症率が8.9%まで跳ね上がります※。 数値ごとの具体的な発症率の違いを下表にまとめました。 検査時のHbA1c 5年以内の糖尿病発症率 将来のリスクの目安 5.5%以下 3.6% 発症リスクが低く保たれている状態 5.6〜5.7% 8.9% 約2.5倍(代謝の乱れが始まりやすい状態) 5.6%という数値は診断基準の6.5%に届いておらず、すぐに投薬が必要な段階ではありません。 しかし、血液中の余分な糖を処理する力が弱まり始めている身体からのサインと考えられます。 体調に変化を感じにくい時期だからこそ、数値の変化を前向きに見つめ直す姿勢が求められます。 5.8%以上で段階的に高まる発症率 5.8%以上で段階的に高まる発症率は、数値の上昇に伴って加速度的に跳ね上がることが明らかになっています※。 数値がわずか0.2%上がるごとに、糖尿病を発症する確率は大きく跳ね上がります※。 追跡調査における数値区分ごとの5年以内の発症率を下記に整理します。 5.8〜5.9%:13.8%(およそ7人に1人が発症)※ 6.0〜6.1%:27.5%(およそ4人に1人が発症)※ 6.2〜6.3%:51.6%(半数以上が発症)※ 6.4%:67.8%(3人に2人以上が発症)※ 5.8%を超えると発症率は1割を超え、6.0%台では約4人に1人が糖尿病へと進みます※。 さらに6.2%を超えると、過半数が5年以内に糖尿病型へと至る厳しい現実が示されています※。 HbA1c 5.6%という数値は、急激なリスク上昇が始まる手前の重要な防衛ラインといえます。 予備群の段階では正常値に戻る人もいる 予備群の段階では正常値に戻る人もいるため、早い段階から生活習慣を整えることが健康を守る鍵となります。 将来のリスクが高いグループに当てはまっても、将来確実に糖尿病へ進行するわけではありません。 年間に5〜10%ほどが糖尿病へ進む一方、同程度の人は正常な血糖値に戻るとも報告されています※。 日常生活の工夫によって期待できる身体の変化を次のとおり整理しました。 炭水化物の過剰摂取を控えることで食後の急激な血糖上昇を和らげる 適度な身体活動を続けることでインスリンの効き目を高められる すい臓の疲弊を防ぐことで血糖をコントロールする力を維持できる 糖尿病への移行リスクを40〜70%ほど抑えられる可能性がある 糖を代謝する力が保たれている予備群の時期であれば、健康的な数値へ引き戻せる余地が十分にあります。 健診での指摘を良いきっかけと捉え、日々の習慣を少しずつ見直すことが大切と考えられています。 健診の指摘後に内科で確認すること 健診の指摘後に内科で確認することは、現在の正確な血糖代謝の状態を把握し、動脈硬化のリスクを総合的に評価することです。 健診でHbA1c 5.6%と判定された段階では、すぐに飲み薬による治療が始まるわけではありません。 医師は問診や再検査を通じて全身の状態を詳しく調べ、今後の対策を一緒に考えていきます。 自覚症状がない時期だからこそ、数値の背景にある身体の変化を正しく読み解く姿勢が大切といえます。 空腹時血糖とHbA1cを測り直して経過を見る 空腹時血糖とHbA1cを測り直して経過を見ることは、数値のブレを排除して正確な耐糖能を評価するために重要です。 血糖値は食事や運動、ストレスなどで敏感に上下する性質を持っています。 日本糖尿病学会の基準において、HbA1cのみを繰り返し測定しても糖尿病の確定診断はできないとされています※。 確定診断には別の日に測った血糖値との一致が必要です。 判断がつかない場合は、時期をおいて再検査を行う方針がとられます※。 HbA1cは過去1〜2カ月の平均を示す指標ですが、初期の耐糖能異常を捉える検査としては適していません※。 赤血球の寿命に影響を与える貧血や鉄欠乏などがあると、実際の血糖状態とズレが生じる可能性があります。 そのため内科では、全身の健康状態を総合的に見極めながら経過を追うことが大切と考えられています。 再検査で医師が確認する主な評価項目を下表にまとめました。 検査項目 確認のポイント 臨床的な意味 空腹時血糖値 10時間以上絶食した後の血糖レベル 100〜109mg/dLは正常域の中でも「正常高値」として警戒が必要とされる※ HbA1c値 過去1〜2カ月の平均的な血糖状態 ・赤血球のヘモグロビンに結合した糖の割合を測定・単独の反復検査では確定診断に用いない※ 赤血球・鉄代謝 貧血や鉄欠乏の有無 ヘモグロビンの代謝回転が変化すると数値が見かけ上ずれる可能性がある 定期的な測定で推移を追うことで、隠れた異常の早期発見につながります。 高血圧・脂質異常・肥満・家族歴などリスクの重なりを確かめる 高血圧・脂質異常・肥満・家族歴などリスクの重なりを確かめることは、動脈硬化の進行を未然に防ぐために欠かせません。 HbA1c 5.6%は単体では軽微な変化に見えても、他の生活習慣病が重なると血管への負担が大きくなります。 血管へのダメージは糖尿病を発症する前から静かに始まっているため、全身の危険因子を早期に把握することが不可欠といえます。 濃厚な糖尿病の家族歴や肥満がある場合は、インスリンの分泌低下や効きにくさが隠れている可能性が高くなります※。 生活習慣病はお互いに影響し合って悪化するため、血糖以外の要素も並行して整える姿勢が求められます。 診察時に医師が確認する主なリスク要因を下記に整理します。 血圧の測定値:高血圧によって血管の内壁に慢性的な圧力がかかっていないか 血清脂質の数値:LDLコレステロールや中性脂肪が高く血管を傷める要因がないか 体格指数(BMIと腹囲):内臓脂肪の過剰な蓄積によるインスリン抵抗性がないか 糖尿病の家族歴:血縁関係のある親族に糖尿病を発症した人がいるか 危険因子が重複している場合は、食事や運動をはじめとする生活改善の緊急度が上がると考えられています。 75g経口ブドウ糖負荷試験が検討されるケース 75g経口ブドウ糖負荷試験が検討されるケースは、通常の採血では捉えきれない食後高血糖や潜在的な異常を明確にしたい場合です。 この試験は、ブドウ糖が75g含まれた検査液を空腹時に飲み、30分後や2時間後の血糖値を測定する精密検査です。 身体が糖をスムーズに処理できるかを直接調べられるため、糖尿病の診断やリスク評価において重要な役割を持ちます。 日本糖尿病学会の報告では、HbA1c 5.6〜5.9%の人は将来の発症リスクが高いグループに位置づけられています※。 空腹時血糖が100〜109mg/dLの方も含め、この段階ではブドウ糖負荷試験を行うことが望ましいと示されています※。 特に高血圧や脂質異常症、肥満などの動脈硬化リスクを持つ場合は、より積極的な実施が推奨されます※。 負荷試験によって判定される3つの区分と基準を次のとおり整理しました。 判定区分 判定基準(血糖値) 主な状態の目安 正常型 空腹時110mg/dL未満 かつ負荷後2時間値140mg/dL未満※ 糖を処理する代謝能力が健康に保たれている状態 境界型 正常型にも糖尿病型にも属さない状態※ ・いわゆる糖尿病予備群に該当する水準・動脈硬化の合併症リスクに注意が必要とされる※ 糖尿病型 空腹時126mg/dL以上 または負荷後2時間値200mg/dL以上※ ・糖尿病の疑いが極めて強い水準・別の日の再検査などを経て確定診断を行う※ 食後の血糖推移を客観的に把握できれば、生活習慣の改善に向けた具体的な方針を立てられるようになります。 数値を5.5%以下に近づけるための生活習慣の見直し 数値を5.5%以下に近づけるための生活習慣の見直しは、すい臓のインスリン分泌機能を守り、健全な代謝を保つために有効な取り組みです。 この段階であれば、すい臓の疲弊を食い止め、血糖を下げる働きを正常域へ引き戻せる余地が十分にあります。 日々の食事や運動を整えるアプローチは、将来の糖尿病への移行を防ぐ上で有効といえます。 HbA1cを基準範囲へ維持するための主な方針を下記に整理します。 血糖値を急激に上昇させる炭水化物の過剰摂取を控える 適度な筋肉の活動によってブドウ糖の消費効率を高める 内臓脂肪を減らしてインスリンの効き目を改善する 定期的な健診や血液検査によって数値の推移を追跡する 早い段階で生活リズムを見直す習慣が、将来の健康を守る基礎となります。 生活習慣の改善で糖尿病の発症リスクは4〜7割下がる 生活習慣の改善で糖尿病の発症リスクは4〜7割下がることは、世界的な大規模研究によって示されています※。 糖尿病の予備群にあたる段階では、対策を行わないと年間5〜10%ほどが糖尿病へ進行するとされています※。 一方で、同程度の割合が正常な血糖状態に戻るとも報告されています※。 米国の糖尿病予防プログラム(DPP)では、生活習慣の改善によって3年間で発症リスクが58%抑えられたと発表されました※。 生活習慣の介入がもたらす身体への影響を下表にまとめました。 取り組み項目 体内で生じる変化 期待できる予防効果 食事内容の調整 ・食後の急激な血糖上昇を抑える・インスリンを分泌するすい臓を休ませる ・食後高血糖による血管への負担を軽減する・持続的な高血糖状態への進行を防ぐ 有酸素運動と筋トレ ・筋肉へのブドウ糖取り込みを促す・インスリンの効き目を改善する ・運動後も糖が効率よく消費されやすくなる・食事・運動を含む生活習慣介入全体で発症リスクが40〜70%下がったと報告されている※ 体重管理と減量 ・過剰な内臓脂肪を減らす・代謝を乱す悪玉物質の分泌を抑える ・全身の糖代謝バランスが整う・HbA1cの数値の改善が期待できる 日々の小さな工夫を重ねることが、血糖代謝を健全に保つ力につながります。 食事・運動・体重の見直しは医師と相談しながら進める 食事・運動・体重の見直しは医師と相談しながら進めることで、個人の健康状態に即した無理のない対策を安全に継続できます。 自己流で極端な糖質制限を行ったり、急に激しい運動を始めたりすると、健康を損なう恐れがあるため注意が必要です。 HbA1cの数値は、貧血や鉄欠乏、腎機能の低下などによっても変動する可能性があります。 全身の血液検査や既往歴を医師とともに確認し、総合的に判断して方針を立てることが推奨されます。 生活習慣を見直す際の着眼点を次のとおり整理しました。 食事:主食となる炭水化物を適量に抑え、食物繊維が豊富な野菜や海藻から先に食べる 運動:早歩きのウォーキングや階段の利用など、日常生活の中で無理なく活動量を増やす 体重:無理のない減量目標を医師と相談して決める 再検査:取り組みの成果を確認するため、医師の指示に従い時期をおいて血糖とHbA1cを測り直す※ 医師や専門スタッフの助言を取り入れることで、安全かつ効果的に健康管理を進められます。 受診の準備と当院のご案内 受診の準備と当院のご案内は、健診での指摘を放置せず、初期の段階から身体の管理を始めるために把握しておきたい事項です。 HbA1c 5.6%は糖尿病と診断される段階ではないものの、将来の発症リスクを見据えた定期的な確認が求められます。 血液検査の数値を正しく評価し、血管を守るための第一歩として活用できます。 健診結果票とお薬手帳を持参する 健診結果票とお薬手帳を持参することは、医師がこれまでの検査推移や体調の変化を把握し、適切な方針を立てるために欠かせません。 受診当日に持参していただきたい物品を下表にまとめました。 持参するもの 理由と確認のポイント 今回および過去の健診結果票 ・過去数年分の数値を比較し、悪化の傾向を確認する・血糖値以外の脂質や血圧などの数値を総合的に評価する お薬手帳(内服薬がある場合) ・服用中の薬剤が血糖や赤血球の代謝に与える影響を確認する・貧血治療薬など検査値に影響する薬がないか調べる マイナンバーカードまたは保険証 ・保険診療による詳しい検査や問診を円滑に行うため・過去の特定健診情報やお薬情報の共有をスムーズにする 糖尿病の診断においては、HbA1c単独の反復測定ではなく血糖値の確認を組み合わせます※。 診断が確定しない場合は、時期をおいて再検査を行う方針がとられます※。 空腹時血糖は、10時間以上の絶食後に測るのが目安とされています※。 受診当日の食事については、予約の際にご確認ください。 クリニックファーストエイドの内科での対応と診療時間 クリニックファーストエイドの内科での対応と診療時間は、忙しい方でも無理なく通院できるよう柔軟な体制を整えています。 当院の内科では、糖尿病・高血圧・脂質異常症などの生活習慣病に対応しています。 当院の健康診断でも、空腹時血糖とHbA1cを測定しています。 境界型の段階であっても動脈硬化による合併症のリスクは高まるため、早期の把握が大切と考えられています※。 当院の診療スケジュールを次のとおり整理しました。 曜日 診療時間 備考 平日 9:30〜14:30 / 16:00〜21:00 お仕事帰りや昼休みの時間帯にも受診できます 土日祝 9:00〜13:00 / 14:00〜18:00 土日祝も受診できます 当院は休診日を設けず、JR神田駅から徒歩0分の立地にあります。 最終の受付時間は診療終了の15分前までです。 ご予約はお電話のほか、WEB予約や公式LINE(24時間受付)からも承っています。 健診で少し高めの数値を指摘された際は、放置せずにご都合のよい時間帯にご相談ください。 まとめ HbA1cが5.6%と指摘されたら、内科で再測定を行い、隠れた血糖の異常や動脈硬化のリスクを確認することが大切です。 直ちに糖尿病と判定される段階ではありませんが、将来の発症リスクが高まり始めている警戒ラインといえます。自覚症状が出にくい初期のうちに生活習慣を整えることで、数値を正常域へ引き戻せる可能性が十分にあると考えられています。 健診結果票をご用意いただき、ご自身の身体の状態を把握するためにも、まずは内科でお気軽に相談してみてください。 参考文献 日本糖尿病学会「糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告(国際標準化対応版)」 日本糖尿病学会「糖尿病診断基準」 厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」 Kawahara T, et al. Incidence of Type 2 Diabetes in Pre-Diabetic Japanese Individuals Categorized by HbA1c Levels: A Historical Cohort Study. PLoS One. 2015;10(4):e0122698. Tabák AG, Herder C, Rathmann W, Brunner EJ, Kivimäki M. Prediabetes: a high-risk state for diabetes development. Lancet. 2012;379(9833):2279-2290.
2026.11.02
無呼吸症候群の検査はどこで受ける?内科での相談から診断の流れ
就寝中の激しいいびきや日中の耐えがたい眠気があり、どの診療科を受診すべきか迷っていませんか?睡眠時無呼吸症候群は成人男性の約3〜7%、女性の約2〜5%にみられ、日本人は骨格的にのどが狭いため、太っていなくても起こることがあるとされています。 本記事では、身近な内科で行える自宅検査の手順や精密検査との違いを整理します。1時間あたりの呼吸停止回数に応じた重症度の判定や、状態に適した治療の選択肢を詳しく解説します。当院では、簡易検査だけでなく精密検査(PSG)もご自宅で受けられます。 受診から診断までの流れを把握しておくことで、多忙な日々の中でも負担を抑えて健康管理へ進める可能性があります。 無呼吸症候群の検査はどこで受ける?まずは相談しやすい医療機関で 無呼吸症候群の検査を受ける医療機関は、睡眠呼吸障害の診療に対応している身近なクリニックや病院が適しています。 いびきや就寝中の息苦しさは自覚しにくく、どの診療科へ向かうべきか判断がつかない方も少なくありません。日本呼吸器学会は呼吸器科や耳鼻科などでの相談をすすめており、内科で相談を受け付けている医療機関もあります。継続した通院を見据えて、生活圏内で相談しやすい医療機関を選ぶことが大切と考えられています。 日本呼吸器学会は呼吸器科や耳鼻科などでの相談をすすめている 日本呼吸器学会は、睡眠中にいびきや呼吸の停止を指摘された場合、呼吸器科や耳鼻咽喉科での相談をすすめています※。 睡眠中の無呼吸には、のどの気道がふさがる閉塞性と、脳の呼吸中枢からの指令が止まる中枢性があります※。日本人はあごが小さくのどが狭い骨格のため、肥満でない体型でも閉塞性の無呼吸が起こる特徴を持っています※。大きないびきが突然途切れる状態は、呼吸が一時的に止まっているサインといえます※。 治療を受けずに放置すると、動脈硬化や心血管障害、難治性の高血圧を招く危険性があります※。気になる症状があるときは、早めに専門的な知識を持つ診療科を受診する姿勢が求められます。 各科の役割と診察内容は下表にまとめました。 診療科 主な役割と診察内容 呼吸器科 ・肺や気道を含めた呼吸機能全体の診察を実施・気流の乱れを細かく評価し適切な呼吸管理につなげる 耳鼻咽喉科 ・鼻腔の通り具合や扁桃の肥大など気道の構造を確認・鼻づまりやのどの狭窄といった物理的な要因を特定する 睡眠外来 ・睡眠呼吸障害や不眠などの睡眠トラブル全般を担当・睡眠の質や日中の生活状況を総合的に把握する 内科で相談から検査・治療まで対応する医療機関もある 内科で相談から検査・治療まで対応する医療機関は身近に多く、初期の相談先として実用的な選択肢になります。 無呼吸症候群は、高血圧や糖尿病、不整脈などの生活習慣病と密接に関係している疾患です。そのため内科によっては、持病の血圧管理などと合わせて無呼吸の相談や検査を受けられる場合があります。かかりつけの内科医に相談すれば、現在の健康状態を踏まえたうえで円滑に検査へ進める可能性があります。 内科で無呼吸症候群の相談をする主な利点は次のとおりです。 生活習慣病の治療や定期処方と同時に、睡眠時の症状を相談できる 自宅や勤務先の近くで見つけやすく、長期的な通院の負担を軽減できる 医療機関によっては、自宅検査の手配から治療機器の管理まで同じ医療機関で受けられる 夜間に何度も目が覚めたり起床時に疲労感が残ったりする場合は、身近な内科への相談が推奨されます。 自宅でできる簡易検査から始められる 自宅でできる簡易検査から始められるため、普段の生活リズムを維持しながら睡眠状態を測定できます。 無呼吸の検査に入院が必要という印象を持つ方もいますが、最初の診断段階では自宅で行う検査が主流です。受診した当日に小型の検査機器を持ち帰るか、配送で受け取り、就寝前に自分で指や鼻へセンサーを取り付けます。普段通りの寝具や室温で眠りながら計測するため、日常のありのままの呼吸状態を把握しやすいとされています。 自宅で実施する簡易検査の特徴は下記に整理します。 鼻に細い管を当て、指先に小さなセンサーを装着して就寝中に計測する 睡眠中の気流の乱れや、血液中の酸素が不足する頻度を自動で記録できる 翌朝に機器を取り外して医療機関へ返却するだけで、身体への負担が少ない 会社や学校を休むことなく手軽に実施できるため、忙しい日々を送る方でも無理なく受診できます。 検査を考えたい症状と放置した場合のリスク 検査を考えたい症状と放置した場合のリスクは、睡眠中の呼吸障害が全身の酸素不足を招き、命に関わる重大な病気につながる点にあります。 睡眠時無呼吸症候群は眠っている間に息が止まるため、本人が自覚しにくい病気とされています。自覚のないまま放置を続けると、心身への負荷が蓄積して健康寿命を縮める要因になりかねません。 受診を検討すべき代表的な症状と健康リスクは、次のとおりです。 睡眠中に大きないびきをかき、途中で息が止まる しっかり眠ったはずなのに、日中に強い眠気や疲労感がある 起床時の頭痛や口の渇き、夜間に何度も尿意で目覚める 血圧が下がりにくくなり、心筋梗塞や脳卒中の危険が高まる 心当たりがある場合は放置せず、早めの検査で呼吸状態を確かめることが推奨されます。 家族に指摘されるいびきや睡眠中の呼吸の停止 家族に指摘されるいびきや睡眠中の呼吸の停止は、睡眠時無呼吸症候群を早期に見つけ出す最も確実なサインです。 いびきは睡眠中に喉の筋肉がゆるみ、狭くなった気道を空気が通る際の振動音です。気道が完全に塞がると呼吸が止まり、体内は酸欠状態に陥ると考えられています。脳は窒息を防ぐために緊急で覚醒指令を出し、あえぐような呼吸を再開させます。本人は眠っているつもりでも、深い休息が取れていない状態といえます。 家族や同居人が気づきやすい危険なサインは、以下のとおりです。 地鳴りのような大きないびきが突然ピタッと止まる 10秒以上の停止後に、息を吹き返すような激しい呼吸が再開する 就寝中に苦しそうにもがき、大きな寝返りを打つ 周囲から睡眠中の息詰まりを指摘された際は、速やかに専門機関へ相談することが大切です。 日中の強い眠気・夜間の頻尿・起床時の頭痛 日中の強い眠気・夜間の頻尿・起床時の頭痛は、就寝中の低酸素血症と頻繁な覚醒によって生じる特徴的な症状です。 十分な睡眠時間を確保していても、呼吸停止で眠りが分断されると疲労は回復しません。脳の休息が妨げられる結果、日中の集中力低下や強烈な睡魔が現れやすくなります。日本呼吸器学会でも、日中の強い眠気が作業効率の低下や労働災害、居眠り運転事故を招く危険性が指摘されています※。 夜間に何度も目が覚める頻尿や起床時の頭痛も、体内の酸素不足がもたらす防御反応と考えられています。熟睡感のなさや倦怠感も見過ごせないサインです※。 代表的な自覚症状と身体の中で生じる理由は、下表にまとめました。 自覚症状 発生する仕組み 日中の強い眠気 ・呼吸停止に伴う中途覚醒で深い睡眠が妨げられる・作業能率の低下や居眠り運転事故につながる※ 夜間の頻尿 ・酸欠により心臓へ負担がかかり利尿ホルモンが分泌される・夜間に何度も尿意を催して目覚める 起床時の頭痛 ・換気不足で血液中の二酸化炭素濃度が上昇する・拡張した脳の血管が神経を刺激して痛みが生じる 口腔乾燥・強い疲労感 ・睡眠中の口呼吸によって喉や口が激しく乾く・睡眠不足が蓄積して朝から体が重く感じる 疲れが抜けない状態を年齢のせいにせず、睡眠の質を疑ってみる姿勢が求められます。 高血圧や脳卒中・心筋梗塞の危険性が高まる 高血圧や脳卒中・心筋梗塞の危険性が高まる背景には、夜間の無呼吸が交感神経を緊張させ、血管へ過度な負担をかけ続ける病態があります。 睡眠中に息が止まると、血液中の酸素が不足して身体が窒息状態に陥ります。脳は全身の酸欠を防ぐために交感神経を興奮させ、心拍数を増やして血圧を跳ね上げます。夜間に血管を休めることができず、血圧の上昇が毎晩繰り返されることで、動脈硬化が急速に進行すると考えられています。 日本呼吸器学会によると、睡眠時無呼吸症候群の患者さんは高血圧や脳卒中、心筋梗塞などを発症する危険性が約3〜4倍高くなります※。さらに、1時間あたりの無呼吸・低呼吸回数を示すAHIが30以上の重症例では、心血管系疾患の危険性が約5倍に上昇します※。放置すると不整脈を招くおそれもあると説明されています※。 放置によって生じる主な血管障害の影響は、下記に整理します。 難治性高血圧:降圧薬が効きにくく夜間や早朝も高い血圧が続く 脳血管障害:動脈硬化により脳の血管が詰まる脳梗塞や破れる脳出血を招く 虚血性心疾患:心臓に酸素を送る血管が閉塞し心筋梗塞や狭心症の引き金になる 睡眠時無呼吸症候群は単なるいびきにとどまらず、生命予後に直結する病態といえます。重篤な合併症を防ぐためにも、早めの段階で検査を受けることが大切です。 日本人に多い睡眠時無呼吸症候群の特徴 日本人に多い睡眠時無呼吸症候群の特徴は、太っていなくても骨格などの影響で発症しやすい点にあります。 日本呼吸器学会によると、成人男性の約3〜7%、女性の約2〜5%にみられます※。 日本人は骨格的にのどが狭いため、肥満でなくても閉塞性の無呼吸が起こることがあるとされています※。 体型に関わらず、いびきや起床時のだるさを感じる際は早めの確認が大切といえます。 肥満だけでなく、あごの形や鼻の病気も原因になる 肥満だけでなく、あごの形や鼻の病気も原因になる理由は、気道が骨格や粘膜の形状によって塞がるためです※。 体重増加による首まわりの脂肪沈着は気道を狭める代表的な要因です※。しかし、首まわりに脂肪がついていない方でも、骨格の小ささや鼻の病気によって空気の通り道が塞がれる場合があります※。 気道を狭める主な身体的要因を下記に整理します。 あごの後退やあごが小さい骨格:舌の収まるスペースが狭くなり喉の奥に落ち込みやすい※ 扁桃肥大や大きな舌:喉周辺の組織が物理的に気道を塞ぎ空気の通りを邪魔する※ 鼻炎や鼻中隔弯曲(鼻の仕切りの曲がり):鼻づまりから口呼吸を招き気道の狭窄を起こす※ 鼻が詰まると口呼吸になりやすく、睡眠中に下あごが下がって舌の沈み込みを助長します。口呼吸が習慣化すると気道はさらに狭まるため、呼吸が頻繁に止まる悪循環に陥る可能性があります。体型に問題がない場合でも、大きないびきを指摘される際は構造的な要因を疑うことが大切と考えられています。 成人男性の約3〜7%、女性の約2〜5%にみられる 成人男性の約3〜7%、女性の約2〜5%にみられる睡眠時無呼吸症候群は、性差や年齢によって発症の要因が変化します※。 男性では40〜50歳代が半数以上を占め、女性は閉経後に増えるとされています※。 性別による発症の特徴と身体の背景を下表にまとめました※。 性別 発症割合 主な発症時期と背景 男性 約3〜7%※ 40〜50歳代が半数以上を占める※ 女性 約2〜5%※ 閉経後に増える※ 首まわりの脂肪沈着は原因の一つとされ、飲酒は睡眠の質を悪くするため控えるよう勧められています※。閉経後にいびきが増えた場合も、一度相談してみるとよいでしょう。 働く日本人男性の約2割に中等症以上の無呼吸があったという研究 働く日本人男性の約2割に中等症以上の無呼吸があったという研究は、自覚のないまま重いリスクを抱える現役世代が多いことを裏付けています。 大阪の企業で働く23〜59歳の男性322人を自宅の携帯型モニターで調べた研究では、22.3%に中等症以上(呼吸障害指数15以上)の睡眠時呼吸障害がみられました※。 睡眠中に酸欠状態が繰り返されると、日々の活動へ次のとおり影響が及びます。 強烈な睡魔や集中力の低下が生じ、仕事の効率が著しく落ちる※ 居眠り運転事故や職場の労働災害といった重大なトラブルを引き起こす危険がある※ 夜間の血圧上昇が慢性化し、将来の心疾患や脳血管疾患を早める要因になる※ 十分な睡眠時間を取っていても疲れが抜けない状態は、単なる過労ではない可能性があります。日中に耐えがたい眠気が生じる場合は、自身の睡眠の質を疑ってみることが大切と考えられています。 簡易検査と精密検査(PSG)の違い 簡易検査と精密検査(PSG)の違いは、自宅で行う初期の判定か、睡眠の質まで調べる確定診断かという点にあります。 睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合、まずは身体への負担が少ない簡易検査から進める流れが一般的です。簡易検査で一定以上の異常がみられた際や、より詳細な評価が必要な場合に精密検査を実施します。 日本呼吸器学会でも、携帯型装置による簡易検査と睡眠ポリグラフ検査(PSG)が診断に用いられます※。検査ごとの役割を理解しておくことで、診断までの道筋を落ち着いて把握できる可能性があります。 両者の主な特徴と相違点は下表にまとめました。 検査の種類 主な検査場所 測定する生体情報 検査の主な役割 簡易検査 自宅の寝室 ・呼吸の空気の流れ・血液中の酸素飽和度 ・無呼吸の疑いを大まかに捉える・負担を抑えてスクリーニングする 精密検査(PSG) 医療機関での1泊入院が一般的(当院はご自宅で検査) ・脳波や眼球の動き・呼吸運動や心電図など ・睡眠の深さや質を精密に測定する・無呼吸のタイプを確定診断する 普段の寝室で測る携帯型装置の簡易検査 自宅の寝室で測る携帯型装置の簡易検査は、日常生活を崩さずに睡眠中の呼吸状態を自宅で記録する検査です。 医療機関から専用の小型機器を持ち帰り、就寝前に自分で指先や鼻にセンサーを取り付けて計測します。血液中の酸素飽和度(SpO2:赤血球が酸素を運ぶ割合)や気流の変化を一晩通して測定する仕組みです。普段通りの環境で眠りながら計測できるため、緊張による睡眠への影響を抑えやすいと考えられています。仕事や家事で忙しい世代であっても、無理なく受けられる点が大きな強みといえます。 携帯型装置で測定する主な項目は以下のとおりです。 鼻や口の気流:呼吸の強さや一時的な停止の有無を感知する いびき音:狭くなった気道を空気が通る際の音を記録する 経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2):血液中の酸素濃度の低下を測定する 脈拍数:呼吸の乱れに伴う心拍数の変動を捉える 得られた記録から酸素の不足頻度を分析し、より詳しい精密検査が必要かどうかを医師が総合的に判断します。 睡眠の深さまで詳しく調べる睡眠ポリグラフ検査(PSG) 睡眠の深さまで詳しく調べる睡眠ポリグラフ検査(PSG)は、脳波と呼吸を同時に測定して睡眠の質を確かめる精密検査です。 簡易検査では捉えきれない「実際の睡眠時間」や「眠りの深さ」を詳細に把握できる強みがあります。頭部や顔面、胸部などに多くのセンサーを装着し、眠っている間の生体信号を一晩かけて細かく記録します。脳波や眼球運動を測定することで、浅い眠りや深い眠り、夢を見るレム睡眠の割合が正確にわかります。 呼吸停止によって脳が意図せず目覚めてしまう微小覚醒の回数まで、詳細に検知できると考えられています。PSGで記録する主な生体信号は次のとおりです。 脳波・眼球運動:眠りの深さや脳の覚醒反応を細かく捉える オトガイ・下肢筋電図:睡眠中のあごや手足の筋肉の緊張度を測定する 気流および胸腹部運動:胸とお腹の動きから気道の塞がり具合を判別する 心電図・血中酸素濃度:酸欠に伴う不整脈の発生や循環器への負荷を調べる 一般的には医療機関へ1泊入院して行われ、無呼吸が起きる根本的な原因を突き止めるために重要な役割を果たします。当院では、精密検査(PSG)も検査キットをご自宅へ郵送し、ご自宅で受けていただけます。1泊の入院は必要ありません。 1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数(AHI)で重症度を判定する 1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数(AHI)で重症度を判定することは、客観的な数値に基づいて病状を把握する基準です。 AHIとは、睡眠1時間あたりに10秒以上の無呼吸や低呼吸が発生した回数の合計を示します。低呼吸は空気の通りが著しく悪くなって換気量が激減する現象であり、完全に止まらなくても身体に大きな負荷を与えます。 日本呼吸器学会の診断基準では、AHIが5以上で眠気などの症状がある場合に本症と診断されます※。測定された数値によって軽症から重症まで分類され、将来的な血管障害のリスクを予測する指標にも活用されています。 重症度の分類と身体への影響は下記に整理します。 重症度の区分 AHI(回/時間) 身体への影響と状態の目安 正常 5未満 健康な睡眠呼吸が維持されている状態 軽症 5以上15未満 いびきや日中の眠気などの症状を伴えばSASと診断される※ 中等症 15以上30未満 AHI20以上で日中の眠気などがあればCPAPが標準的な治療※ 重症 30以上 心血管疾患を起こす危険性が約5倍に跳ね上がる※ 数値が高くなるほど体内への酸素不足が常態化し、心筋梗塞や脳卒中といった合併症を招く危険性が跳ね上がると考えられています※。医師はAHIの数値に加えて、患者さんが抱える自覚症状や生活環境を総合的に見極めたうえで適切な方針を決定します。 内科での相談から診断・治療までの流れ 内科での相談から診断・治療までの流れは、問診と検査を段階的に進めながら病態を見極め、適切な治療法へつなぐ手順をとります。 睡眠時無呼吸症候群は本人の自覚が乏しいことも多いため、初期の問診から着実に評価を進める姿勢が大切と考えられています。身近な内科で相談すれば、高血圧などの持病の管理と並行して円滑に確定診断へ進められる可能性があります。 診察から治療開始に至る大まかなステップは以下のとおりです。 診察室での問診:自覚症状や家族からの指摘、既往歴を詳しく医師に伝える 自宅での簡易検査:小型の機器を装着して就寝し、睡眠中の呼吸状態を測定する 結果の判定と精密検査:数値に応じて確定診断へ進むか、より詳しい検査を検討する 治療計画の決定:重症度や体格、生活習慣に合わせて最適な治療法を選択する 各段階を正しく把握しておくことで、不安を感じることなく検査に臨めるようになるといえます。 問診でいびき・眠気・家族からの指摘を伝える 問診でいびき・眠気・家族からの指摘を伝えることは、睡眠中の異常を正しく把握し、適切な検査を選択する手がかりになります。 日中の強い眠気は代表的な自覚症状ですが、すべての方にはっきりと現れるわけではありません※。そのため、夜間の呼吸苦や熟睡感の欠如、起床時の頭痛なども見逃せない情報といえます※。 いびきが途切れる状態は、気道が塞がり一時的に息が止まっているサインと考えられています※。本人に自覚がなくても、同居する家族が気づいた異変を共有することが早期発見につながります。 問診時に医師へ共有しておきたい主な項目は次のとおりです。 睡眠中の大きないびきや、途中で息が止まるような呼吸の中断※ 日中の我慢できない眠気、朝起きたときのだるさや強い倦怠感※ 起床時の頭痛や口の渇き、夜間に何度も尿意で目覚める症状※ 高血圧や心血管障害、不整脈などの持病や治療の経過※ 睡眠中の様子を周囲から指摘された経験があれば、些細な変化でも医師へ伝える姿勢が大切とされています。 簡易検査の結果によって精密検査に進む 簡易検査の結果によって精密検査に進む判断は、自宅検査で測定された呼吸停止の頻度や酸素濃度の低下具合をもとに行われます。 まずは普段の寝室で手軽に行える簡易検査を実施し、睡眠中の空気の流れや血液中の酸素状態を一晩かけて記録します。得られた数値から病気の程度を大まかに把握し、確定診断に向けて次のステップを検討する流れが一般的と考えられています。 簡易検査の数値が治療基準に達していれば、そのまま確定診断となって早期に治療を開始できるケースもあります。一方で、判定が難しい場合や、他の睡眠障害が疑われる場合は精密検査が検討されます。睡眠ポリグラフ検査(PSG)では、脳波や眠りの深さを計測し、より正確な病態の把握を目指せるといえます。 簡易検査後の進路と判断の目安を下表にまとめました。 簡易検査の結果状況 検査後の主な対応方針 目的と判断の理由 数値の異常が顕著にみられる 確定診断と治療導入への移行 重い呼吸障害が確認され早期の治療開始が妥当と判断されるため 数値が境界域で判断が分かれる 精密検査(PSG)を実施 脳波などを測定し睡眠の質や無呼吸の種類を詳しく見極めるため 数値は軽度だが症状が重い 精密検査や専門科への相談 睡眠の分断や他の睡眠障害が隠れていないか正確に評価するため 段階的に検査を進めることで、身体への負担を抑えながら的確な診断へたどり着ける可能性が高まります。 AHIと症状をもとに治療方針を決める AHIと症状をもとに治療方針を決める際は、呼吸停止の頻度を表す数値と、全身の健康状態を総合的に見極めて判断します。 睡眠時無呼吸症候群の治療法は、検査結果に基づいて最適な手段が選択されます※。無呼吸を放置すると、動脈硬化や心血管障害、難治性の高血圧を招く危険があるため、早期の介入が欠かせないと考えられています※。 肥満がある場合は、減量が治療の基本とされています※。ただし、減量だけで治すのは難しい場合もあります。これに加えて、数値の高さや身体の特徴に合わせて専用の器具を用いた治療を組み合わせていくことが有効とされています。 重症度や病態に応じた主な治療法は下記に整理します。 CPAP(持続陽圧呼吸療法):重症や合併症を伴う中等症以上で気道を広げる標準的な治療※ 口腔内装置(マウスピース):下あごを前方に固定し気道を確保する軽症向けの装具※ 生活習慣の調整:肥満の減量を基本とし、ごく軽症では横向き寝の工夫などを取り入れる※ 重症度だけでなく、日中のつらさや持病の有無を医師と十分に共有したうえで、納得のいく治療方針を選ぶことが大切といえます。 検査結果に応じた治療と生活の見直し 検査結果に応じた治療と生活の見直しは、測定された重症度や自覚症状の強さに合わせて最適な手段を選択します。 治療の目的は、睡眠中の気道(空気の通り道)のふさがりを解消し、夜間の酸欠と眠りの分断を防ぐことです。専用の装具を用いた呼吸の補助だけでなく、生活習慣の改善を組み合わせることが健康維持につながるといえます。 主な治療法とアプローチの違いを下表にまとめました。 治療と対策の区分 主なアプローチ 対象となる状態の目安 CPAP療法 ・空気を送り気道を物理的に広げる・鼻マスクを一晩中装着する AHI20以上で日中の眠気などがある場合 口腔内装置(マウスピース) ・下あごを前に出して喉の狭窄を防ぐ・歯科で専用の装具を作製する 軽症から中等症の一部 生活習慣の調整 ・肥満があれば減量する・飲酒を控える・ごく軽症では横向き寝が有効なこともある 検査結果に合わせて医師と相談 AHI20以上で日中の眠気などがある場合はCPAPが標準的な治療 AHI20以上で日中の眠気などがある場合はCPAP(持続陽圧呼吸療法)が標準的な治療として選択されます※。 CPAP(シーパップ)は、専用の鼻マスクから空気を送り込み、圧力によって気道が押しつぶされるのを防ぐ医療機器です。睡眠中の空気の通り道を保てるため、呼吸が止まる回数を大幅に減らす効果が期待できます。 体内の酸素不足が解消されることで、日中の強い睡魔や起床時の疲労感が和らぐ可能性があります。日本呼吸器学会は、CPAP治療によって死亡率が健常人と同等まで低下することが示されていると説明しています※。 CPAP治療がもたらす主な利点は以下のとおりです。 睡眠中の気道閉塞を防ぎ、安定した呼吸を一晩中保てる 日中の眠気が軽くなり、居眠り運転事故や作業効率の低下を防ぐことが期待できる 心臓や血管への負担を減らすことが期待できる 検査結果で適応があれば、健康保険を使って治療を受けられる 導入初期はマスクの圧迫感や送気の風圧に違和感を覚える場合もあります。マスクの形状や空気の圧力を担当医と細かく調整しながら、無理なく継続することが大切といえます。 軽症で使われることがある口腔内装置(マウスピース) 軽症で使われることがある口腔内装置(マウスピース)は、下あごを前方に固定して気道を広げる装具です※。 下あごを数ミリ前に出した状態で上下の歯を固定し、睡眠中に舌が喉の奥へ落ち込むのを防ぎます。主に軽症から中等症でCPAPの適応とならない場合や、機器の装着が合わない方に対して選ばれる傾向があります。 一般に、医師の診断をもとに歯科で歯型に合わせて作製します。口の中に装着する手軽さがあり、電源が不要なため出張や旅行への持ち運びに適しています。 口腔内装置の特徴と留意点は次のとおりです。 喉の奥にある空気の通り道を広げ、就寝時のいびきや呼吸停止を和らげる 小型で持ち運びが容易であり、外出先でも普段通りに使用できる 使い始めにあごの痛みや違和感、歯の浮くような感覚が生じることがある 重症の無呼吸に対しては、気道を広げる効果が不十分になる可能性がある 噛み合わせの変化やあごの関節への負担を防ぐため、作製後も定期的に歯科を受診して調整を続ける姿勢が求められます。 減量・飲酒を控える・横向き寝などの生活の工夫 減量・飲酒を控える・横向き寝などの生活の工夫は、医療機器による処置と合わせて行うべき重要な自己管理です。 生活習慣を整えて気道を狭める要因を取り除くことで、呼吸状態の安定化を後押しできます。肥満がある方は、体重を減らすことで首まわりの脂肪が減り、無呼吸が軽くなる傾向がみられます※。 日々の暮らしの中で実践したい生活上の工夫は下記に整理します。 減量への取り組み:食事や運動習慣を見直し、喉周辺の脂肪沈着を減らして気道を確保する※ 就寝前の飲酒制限:アルコールは筋肉をゆるめて気道狭窄を招くため、就寝前の飲酒を控える※ 寝姿勢の工夫:ごく軽症では横向き寝が有効なことがある※ 服薬の確認:睡眠薬などを使っている場合は、受診時に医師へ伝える 治療機器だけに頼るのではなく、日々の生活習慣を同時に整えることが、症状の根本的な緩和につながるといえます。 受診の準備と当院のご案内 受診の準備と当院のご案内は、初診時の問診を円滑にし、的確な診断と早期の治療開始につなげるための大切なステップとなります。 睡眠時無呼吸症候群は眠っている間に症状が出るため、本人が無自覚のまま放置してしまうケースも少なくありません。 受診前に自身の症状や睡眠環境を整理しておくことで、医師が病態を正しく判断しやすくなると考えられています。当院の内科では、多忙な現役世代の方でも通院を継続できるよう、自宅で完結する検査体制と柔軟な診療環境をご用意しています。 家族からの指摘や眠気の程度をメモして持参する 家族からの指摘や眠気の程度をメモして持参することは、自覚しにくい睡眠中の呼吸異常を医師が正確に把握する重要な手がかりになります。 睡眠中に大きないびきが突然途切れる状態は、気道が塞がって呼吸が止まっている危険なサインといえます※。日本呼吸器学会でも、睡眠中の呼吸停止を指摘された場合は専門機関で検査を受けるようすすめています※。 本人は睡眠中の無呼吸に気づきにくいため、診察時に自覚症状をうまく説明できない場面も珍しくありません。日中の強い眠気は代表的な症状ですが、すべての患者さんにはっきりと現れるわけではないとされています※。 夜間の息苦しさや起床時の頭痛、夜間頻尿や熟睡感の欠如といった兆候も、病態を突き止める大切な情報と考えられています※。一人暮らしの方でも、朝の倦怠感や日中の集中力低下などの自覚症状を整理しておくことで、円滑な診断につなげられます。 受診前に整理して持参したい具体的な項目は、次のとおりです。 家族や同居人から指摘されたいびきの音量や呼吸が止まる頻度 日中に強い眠気や集中力の低下を感じる時間帯や状況 夜間の頻尿や起床時の頭痛、強い疲労感や熟睡感のなさ 健康診断で指摘された血圧や血糖値、体重の変動記録 お薬手帳や現在服用している治療薬の正確な情報 睡眠中の異変に気づいたご家族やパートナーと一緒に受診すると、医師へ客観的な様子をより正確に伝えられるようになります。 クリニックファーストエイドの睡眠時無呼吸症候群の検査と診療時間 クリニックファーストエイドの睡眠時無呼吸症候群の検査と診療時間は、お仕事を休まずに無理なく受診できるよう整えられています。当院では、ご自宅での簡易検査と精密検査(PSG)に対応しています。検査結果で適応があった場合のCPAP治療には、健康保険が適用されます。 当院の簡易検査はご自宅で受けられ、精密検査(PSG)もキットがご自宅に郵送されるため、1泊の入院検査は必要ありません。簡易検査では、鼻・指・動作の3つのセンサーで呼吸・いびき・SpO2(血液中の酸素の割合)・脈拍を測ります。簡易検査でAHIが20を超え39未満だった場合は、精密検査(PSG)を行います。 当院の所在地や診療スケジュールは、下表にまとめました。 項目 当院の診療体制 所在地 JR神田駅より徒歩0分 平日の診療時間 9:30〜14:30/16:00〜21:00(受付終了は各15分前) 土日祝の診療時間 9:00〜13:00/14:00〜18:00(休診日なし) 検査方法 ・指や鼻にセンサーを着ける自宅簡易検査・郵送キットを用いた自宅精密検査(PSG) 予約方法 WEB予約、公式LINE、電話受付 平日夜間は21時まで診察を行っているため、退勤後でもゆとりを持って受診していただけます。 土日や祝日も休まず診療を受け付けており、平日の受診が難しい方でも継続して治療に取り組みやすい環境といえます。 まとめ 無呼吸症候群の検査は、呼吸器科や睡眠外来に限らず、身近な内科でも相談や自宅での検査を受けられます。 普段の寝室で行える簡易検査から始められるため、仕事や家事で忙しい方でも無理なく受診できると考えられています。放置すると心血管疾患などのリスクを高める病気ですが、早期の把握と適切な治療により負担の軽減につながるといえます。 いびきや日中の強い眠気にお心当たりのある方は、無理に抱え込まず、通いやすい内科クリニックへ気軽に相談してみてください。 参考文献 日本呼吸器学会「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」 日本呼吸器学会「呼吸器Q&A Q15. 夜、呼吸、いびきが止まると言われました。」 Nakayama-Ashida Y, et al. Sleep-disordered breathing in the usual lifestyle setting as detected with home monitoring in a population of working men in Japan. Sleep. 2008;31(3):419-425.
2026.11.02
発熱は何科に行く?当日受診できる時間の目安と発熱外来の受付の流れ
急に熱が出たとき、最初に何科を受診すべきか迷っていませんか。熱で体がつらいときほど、落ち着いて判断するのは難しいものです。 本記事では、大人がまず相談すべき内科や発熱外来の特徴に加え、当日受診できる時間の目安や受付の流れを解説します。 事前に検査手順や持参すべき情報を把握しておくと、来院時の体力消耗を抑えられるといえます。迷わず適切な医療機関へアクセスでき、早期の体調回復につながる可能性が高まります。 発熱は何科に行く?大人はまず内科(発熱外来)へ 大人が発熱したときの受診先は、全身を幅広く診療できる内科や発熱外来が適しています。 発熱の原因は、かぜやインフルエンザ、新型コロナウイルス感染症、尿路感染症など多岐にわたります。 内科は特定の臓器に限らず身体全体を診察できるため、原因が特定できない段階の相談先として適しているといえます。 新型コロナの5類移行後は、一般の医療機関で診療する体制に 新型コロナの5類移行後は、指定機関だけでなく、身近な一般の医療機関で診療を受けられる体制へと変わりました。 東京都新型コロナ相談センターは令和6年3月31日をもって終了し、現在は通常の医療提供体制の中で診療が行われています※。 制度移行に伴う変化について、下表にまとめました。 項目 移行前 5類移行後(現在) 診療場所 指定された一部の医療機関 広く一般的な医療機関 相談体制 自治体の専用相談窓口など 通常の医療提供体制 現在は受診先が広がった一方で、感染対策のルールや受付手順は医療機関ごとに異なります。 受診を希望する際は、あらかじめ各クリニックのウェブサイトなどで対応方法を把握しておくことが大切と考えられています。 発熱外来とは発熱のある人を受け付ける外来 発熱外来とは、発熱やせきといった感染症の疑いがある方を対象に、安全に診療を行うための専門外来です。 発熱外来で対応している主な症状は、次のとおりです。 発熱や寒気(悪寒) のどの激しい痛み、せき、鼻水 強い体のだるさ(倦怠感)、関節痛や筋肉痛 吐き気、下痢などの胃腸症状 医師が必要と判断した場合は、病原体を特定する迅速検査や、つらい症状を緩和する薬の処方が行われます。 感染対策として予約制をとっているクリニックも多いため、来院方法を事前に調べておくと安心といえます。 子どもの発熱は小児外来・小児科へ 子どもの発熱は、成長段階に応じた専門的な診療が必要となるため小児科や小児外来を受診することが基本です。 当院には小児外来があり、お子さまの発熱も受け付けています。 平日は21時まで、土日祝日も18時まで診療しています。 子どもが小児科を受診すべき理由は、以下のとおりです。 小児特有の病気や容態の急変に詳しい医師が診察する 年齢や体重に合わせた精密な薬の処方が行える 小児用の検査機器や処置に適した設備が整っている 一般的な内科クリニックでは、診療対象を15歳以上や高校生以上に限定している場合があります。 受診先を探す際は、その医療機関が何歳から対応しているかを事前にウェブサイトなどで確認しておくと確実といえます。 当院は内科と小児外来の両方があり、大人もお子さまも同じクリニックで受診できます。 すぐに受診すべき発熱のサインと迷ったときの相談先 すぐに受診すべき発熱のサインと迷ったときの相談先を知ることは、重症化を防ぎ適切な治療へつなげるために重要です。 熱そのものよりも、一緒に出ている症状に重い病気のサインが隠れていることがあります。 自力で様子を見るのではなく、危険な兆候を見極めて専門の相談窓口を活用する判断が求められます。 高熱が続く・呼吸が苦しい・意識状態がおかしいときは早めに受診 高熱が続く・呼吸が苦しい・意識状態がおかしいときは早めに受診すべき緊急性の高いサインといえます。 全身の血流や呼吸機能、脳の働きに深刻な負担がかかっている可能性があります。 特に注意すべき危険な兆候を、以下のとおり整理しました。 高い熱が続いている※ 呼吸が苦しい※ 呼びかけへの反応が鈍いなど、意識状態がおかしい※ 高齢者や基礎疾患(心臓病や糖尿病など)がある方は、熱が高くならなくても重症化する場合があります。 普段と比べて受け答えがおかしいと感じた段階で、早めに医療機関へ相談することが賢明と考えられています。 救急車を呼ぶか迷ったら「♯7119」 救急車を呼ぶか迷ったら「♯7119」に電話をかけることで、受診の緊急性を専門家に判断してもらえます。 ♯7119は、急な体調不良の際に救急車の要請や受診を迷ったときに利用できる電話相談窓口とされています※。 消防と医療が連携しており、医師や看護師などの専門スタッフが状況を詳しく聞き取ってくれます※。 窓口で相談できる支援内容は、次のとおりです。 症状の緊急度や、救急車を呼ぶべきかの判断と助言 自宅ですぐに行える応急手当の具体的な方法 状態に合わせた診療科や、現在診療している医療機関の案内 東京都においては東京消防庁がこの事業を実施しています※。 突然の意識障害や激しい呼吸困難など、命に関わる明らかな異変がある場合は迷わず119番通報を行ってください。 夜間や休日の受診先の探し方 夜間や休日の受診先の探し方は、公的な医療情報システムや自治体の窓口を正しく使い分けることが近道です。 時間外は診療を行う医療機関が大幅に減るため、事前確認なしに向かうと受診できない事態が起こり得ます。 受け入れ状況や診療時間をあらかじめ把握したうえで、落ち着いて行動する必要があります。 夜間や休日に受診先を見つける主な手段を、下表にまとめました。 探す手段 特徴と活用方法 自治体のホームページ ・当番医や地域の休日急患診療所の情報を掲載・各自治体の最新情報が確認可能 医療情報ネット ・国が提供する全国の医療機関検索システム・夜間や休日に対応する近隣の病院を検索可能 ♯7119などの相談窓口 ・救急車を呼ぶべきか、すぐ受診すべきかを相談・適切な診療科や医療機関を案内 受診を決める前には、各医療機関の受付終了時刻や発熱外来の対応状況を電話で確認しておくと安心です。 移動手段の確保が難しい場合や体調の急変が心配なときは、無理をせず専門窓口へ相談することが望ましいといえます。 受診するタイミングの目安 受診するタイミングの目安は、体温の数値だけでなく発熱が続く日数や全身の消耗度合いで判断します。 高熱が続く、呼吸が苦しい、意識状態がおかしいなど具合が悪いときは、早めに医療機関を受診します※。 迷うときは、無理に様子を見ず医療機関に相談してください。 体温がそれほど高くない場合でも、飲食が全くできないときや体のだるさが急速に悪化するときは受診が推奨されます。 無理をして出勤や登校を続けず、体調に異変を感じた段階で休息を取ることが回復への近道といえます。 抗インフルエンザ薬は発症から48時間以内の開始で効果が期待できる 抗インフルエンザ薬は発症から48時間以内の開始で効果が期待できるとされています※。 症状が出てから48時間以降に服用を始めた場合は、十分な効果は期待できないとされています※。 発症から48時間以内に内服を始めると、発熱する期間が通常1〜2日ほど短縮されると考えられています※。 服用時期による治療効果の違いについて、次のとおり整理しました。 服用開始の時期 期待される効果と理由 発症から48時間以内 ・ウイルスの増殖を効果的に抑制できる・発熱期間が通常1〜2日短縮する 発症から48時間以降 服用による十分な治療効果は期待できない 検査を行うかどうか、いつ行うかは、症状や経過をみて医師が判断します。 つらい症状があるときは、無理に時間を置かず医師へ相談してください。 薬を使うかどうかは医師が判断する 薬を使うかどうかは医師が判断するため、受診すれば誰もが抗インフルエンザ薬を処方されるとは限りません※。 年齢や持病、症状の重さなどを踏まえて、医師が使うかどうかを判断します。 小児や未成年者の治療においては、急に走り出すなどの異常行動が報告されている点にも注意を払う必要があります※。 重大な事故を未然に防ぐため、抗ウイルス薬による治療開始後少なくとも2日間は一人にしない配慮が呼びかけられています※。 症状に応じて、解熱鎮痛薬などでつらい症状を和らげることもあります。 薬の使用に関して不安や希望があるときは、診察時に医師へ相談して適切な処方方針を決めることが大切といえます。 受診前に予約方法と受付終了時刻を確認する 受診前に予約方法と受付終了時刻を確認することは、当日確実な診察を受け長時間の待機を防ぐために大切です。 発熱外来の予約方法や受付時間は、医療機関ごとに異なります。 受付終了の間際に来院すると、当日の診察が難しい場合もあります。 医療機関へ向かう前に確かめておきたい要点は次のとおりです。 WEB予約システムや事前の電話連絡による受診予約が必要か 発熱外来の受付終了時刻が、通常の診療終了時刻より早く設定されていないか 健康保険証やマイナンバーカード、服用中のお薬手帳が準備できているか 体力の消耗を少しでも抑えるために、各クリニックの受付手順を事前に確認して行動することが大切といえます。 発熱外来の受付から診察までの流れ 発熱外来の受付から診察までの流れは、事前予約から問診、院内での検査や処方に至るまで感染拡大を防ぐ手順で統一されています。 東京都新型コロナ相談センターは令和6年3月31日をもって終了し、現在は身近な一般の医療機関で診療を行う通常の医療提供体制へ移行しています※。 医療機関ごとに受付方法や待機場所の運用が異なるため、受診手順をあらかじめ把握しておくことで体調不良時でも迷わず受診へ進めると考えられています。 WEB予約で「発熱外来」を選んで予約する WEB予約で「発熱外来」を選んで予約する手順は、院内での二次感染を防止し、待ち時間を最小限に抑えるために導入されています。 一般の患者さんと動線を分けるため、クリニック側では待機場所の確保や換気といった受け入れ態勢を整える必要があります。 医療機関によっては、予約時に症状を入力する仕組みがあります。 予約時や受付で伝えられるよう、次の項目を整理しておくと安心です。 発熱が始まった具体的な日時と体温の推移 のどの痛み、せき、鼻水、息苦しさなどの呼吸器症状 吐き気、下痢、強い倦怠感(けんたいかん:体のだるさ)などの全身症状 周囲における感染症の流行状況や濃厚接触の有無 治療中の持病(基礎疾患)や常用薬の有無 事前に詳しい体調を伝えておくことで、医師や看護師が重症度を素早く見極められるようになります。 対面での問診にかかる時間を短縮できれば、高熱でつらいときの体力消耗を防ぐことにつながるといえます。 来院時は不織布マスクを着用する 来院時は不織布マスクを着用することは、周囲への飛沫拡散を強力に防ぎ、医療従事者や他の受診者を守るための必須事項です。 発熱を引き起こすウイルスの多くは、咳やくしゃみなどの細かい水滴(飛沫)に乗って広がります。 来院時に実践したい感染対策の要点を、下表にまとめました。 対策項目 具体的な実践方法 正しい装着 ・鼻からあご先まで隙間なく覆う・ノーズワイヤーを鼻筋に沿わせて密着させる 院内での配慮 ・待合室や診察室でマスクを外さない・鼻出しマスクやあごマスクの着用を避ける 一人ひとりがマナーを遵守することが、すべての患者さんが安心して受診できる環境を守ることにつながると考えられています。 問診・診察のあと、医師の判断で検査を行う 問診・診察のあと、医師の判断で検査を行う工程は、発熱の原因を正しく見極めて最適な処置を決めるために欠かせない手順です。 発熱をもたらす病原体は多岐にわたり、初期症状のみで原因を特定することは困難とされています。 医師は診察室での問診やのどの状態、呼吸音の確認などを経て、必要な検査項目を医学的に判断します。 発熱外来で検討される主な迅速抗原検査を、以下のとおり整理しました。 新型コロナウイルス抗原検査(ウイルスの特徴的なタンパク質を検出) インフルエンザ抗原検査(A型・B型の判定) 溶連菌(ようれんきん)抗原検査(のどに白い膿が付く細菌感染を特定) アデノウイルス迅速検査(高熱や強いのどの痛みを起こすウイルスを特定) どの検査を行うかは、症状や経過をもとに医師が判断します。 診察後は処方薬で症状を和らげ、水分補給と安静を 診察後は処方薬で症状を和らげ、水分補給と安静を徹底することが、身体の自然免疫を高めて早期回復を目指す基本となります。 処方される解熱鎮痛剤は、つらい症状を和らげるための薬です。 体力を維持するために薬を活用しながら、自宅で身体を休めることが治療の根幹と考えられています。 診察を終えて帰宅した後の過ごし方を、下記にまとめています。 脱水症の予防(常温の水や経口補水液を少量ずつこまめに摂取する) 胃腸への配慮(食欲がないときは無理をせず、おかゆやうどんなど消化の良いものを選ぶ) 睡眠環境の確保(発汗に応じた衣類の調整を行い、体力の消耗を最小限に抑える) 発熱時は汗から多量の水分と塩分が失われるため、食事をとれなくても水分の補給だけは優先して行う必要があります。 水分が全く取れない状態が続くときは、点滴などの処置が必要になるケースもあるため、医療機関への再相談を検討してください。 受診後の過ごし方と職場・学校への復帰の目安 受診後の過ごし方と職場・学校への復帰の目安は、無理な活動を避けて安静を保ち、周囲への二次感染を防ぐ行動を徹底することです。 発熱時は体力を大きく消耗するため、まずは自宅で横になって休息を取り、体の回復に専念する必要があります。 食欲がわかない場合でも、脱水症を防ぐためのこまめな水分補給だけは優先して行うことが大切と考えられています。 水分がまったく取れない状態が続くときは、脱水症状が悪化する恐れがあるため、医療機関への再相談を検討してください。 発熱がある間は人混みへの外出を控え、無理をして学校や職場へ向かわない配慮が求められます※。 咳やくしゃみが出る症状があるときは、飛沫の拡散を防ぐために不織布製マスクを着用することが大切といえます※。 自宅療養中に意識したい過ごし方の基本は以下のとおりです。 水分と塩分の補給(体液に近い経口補水液や薄めたスポーツドリンクを少しずつ飲む) 睡眠と安静の確保(解熱剤で一時的に体が軽くなっても無理に動かず横になる) 家庭内での感染対策(咳やくしゃみが出る間は同居する家族と部屋を分け、不織布マスクを付ける) インフルエンザの出席停止期間は「発症後5日かつ解熱後2日」 インフルエンザの出席停止期間は、学校保健安全法施行規則で「発症後5日かつ解熱後2日」と法的に規定されています※。 発熱が始まった日を「0日目」として数えるため、どれほど早く熱が下がっても発症から5日間は登校できません。 インフルエンザウイルスは、発症前日から発症後3〜7日間にわたって体外へ排出される可能性があります※。 熱が下がっても体内に病原体が残っているため、周囲へうつさない期間として日数が設定されているといえます。 年代に応じた出席停止期間の基準を下表にまとめました。 対象区分 出席停止となる期間の基準 療養期間が定められている医学的な理由 児童・生徒 発症した後5日を経過し、かつ解熱した後2日 解熱後もウイルスを排出している恐れがあるため 幼児 発症した後5日を経過し、かつ解熱した後3日 同上 大人の出勤の目安は、職場の規則に従います。 厚生労働省は、ウイルスが発症後3〜7日間排出されることがあるため、その間は外出を控えるよう呼びかけています※。 抗ウイルス薬の内服によって早期に解熱した場合でも、ウイルスの排出が直ちに止まるわけではありません。 解熱後に焦って職場へ復帰すると、体力が落ちている体に負担がかかり、体調を再び崩してしまう恐れがあります。 自身の体を十分に回復させるためにも、自己判断で出勤を早めず、決められた日数は療養に専念することが大切と考えられています。 新型コロナは発症後5日間の外出を控えるのが目安 新型コロナは、発症後5日間は外出を控えるのが目安と厚生労働省が示しています※。 5類感染症へ移行したことで法律に基づく外出自粛要請は撤廃され、外出を控えるかどうかは個人の判断に委ねられています※。 ただし、感染力がなくなったわけではないため、発症日を0日目として5日間は自宅療養を行うことが望ましいとされています※。 療養の経過と外出を判断するポイントを、次のとおり整理しました。 発症後3日間(感染性のウイルスの排出量が非常に多く、他人にうつすリスクが最も高い時期)※ 5日目までの過ごし方(5日経過すると排出量が大きく減るため、この期間までは外出を控えるのが目安)※ 5日目に症状が残る場合(解熱し、のどの痛みなどの症状が軽快して24時間程度が経過するまで様子を見る)※ 体内に残ったウイルスは、発症後10日間が経過するまで排出される可能性があると報告されています※。 5日を過ぎて外出を再開する場合でも、10日目までは不織布マスクを着用して周囲に配慮することが大切です※。 特に高齢者や持病(心臓病や糖尿病など)のある重症化リスクの高い方との接触は、できる限り控える配慮が求められます※。 周囲への気配りを続けながら、体調の回復に合わせて段階的に普段の生活へ戻していくことが賢明といえます。 職場復帰に陰性証明書や治癒証明書は不要 職場復帰に陰性証明書や治癒証明書が不要であることは、厚生労働省の方針として公式に示されています※。 厚生労働省は、インフルエンザの職場復帰の際に改めて検査を受ける必要はなく、治癒証明書や陰性証明書の提出も不要としています※。 職場へ復帰する際に押さえておきたい要点を、以下のとおり整理しました。 復帰時の再検査は不要※ 治癒証明書や陰性証明書は不要※ 日数と症状の軽快で判断(発症からの経過日数と、熱が下がって症状が落ち着いているかをもとに復帰を決める) 推奨される療養期間を終え、日常生活を問題なく送れる程度まで体調が戻っていれば通常の勤務へ復帰できます。 復帰のタイミングについては自己判断だけで決めず、職場のルールに沿って上司や担当窓口へ連絡することが大切です。 発熱からの経過日数や現在の自覚症状を正確に伝え、無理のない形で業務を再開することが推奨されるといえます。 受診の準備と当院のご案内 受診の準備と当院のご案内は、診察時に病状を正確に把握し、速やかに適切な治療へつなげるための大切な手続きです。 東京都新型コロナ相談センターは令和6年3月31日をもって終了しました。 現在は広く一般的な医療機関で新型コロナウイルス感染症に対応する通常の医療体制となっています※。 制度の移行に伴い、発熱時の受診先選びや事前準備の重要性が増しているといえます。 高熱で思考力が低下している状態でも、要点を整理しておくことで円滑な診療につながると考えられています。 体温の経過と症状、服用中の薬をメモしておく 体温の経過と症状、服用中の薬をメモしておくことは、診察時の負担を減らし、迅速な診断と適切な処方につなげる有効な手段です。 発熱時は悪寒や強い倦怠感によって、これまでの経過を順序立てて医師へ説明することが難しくなります。 発熱の推移や症状が現れた順番は、病原体の種類を特定するうえで重要な判断材料とされています。常用薬やお薬手帳を持参することは、薬の重複投与や危険な相互作用を防ぐためにも欠かせない配慮といえます。 受診前に整理しておきたい確認項目を、下表にまとめました。 確認項目 具体的な記録内容 医師が確認する医学的な理由 発熱の推移 ・発熱が始まった具体的な日時・測定ごとの体温変化の推移 ・感染の進行段階を把握するため・検査に適した時期を判断するため 伴う症状 ・のどの痛み、咳、鼻水、息苦しさ・下痢、腹痛、吐き気、発疹の有無 ・感染部位や原因を推測するため・重症化や合併症の兆候を見極めるため 周囲の状況 ・家族や職場の感染状況・直近における海外渡航歴の有無 ・流行中の感染症との関連を調べるため・二次感染の拡大防止に配慮するため 服用中の薬 ・常用薬の名前やお薬手帳の持参・直前に飲んだ市販の解熱鎮痛薬 ・処方薬との危険な飲み合わせを防ぐため・解熱薬による症状の一時的な隠蔽を把握するため 事前に要点を控えておくことで、診察室での負担を抑えながらスムーズに問診を終えられます。 持病やアレルギー歴がある場合も共有しておくと、ご自身の状態に適した安心できる治療方針を決定できる可能性が高まります。 クリニックファーストエイドの発熱外来と診療時間 クリニックファーストエイドの発熱外来と診療時間は、体調不良時に無理なく受診できるよう、通いやすさに配慮して設定されています。 当院はJR神田駅から徒歩0分で、休診日はありません。 ご予約はWEB予約・電話・公式LINEで承っています。 WEB予約の際は、メニューから「発熱外来」をお選びください。 お子さまの発熱は、小児外来で受け付けています。 当院の診療スケジュールと受付時間を、次のとおり整理しました。 診療日 診療時間 受付締切 平日 9:30〜14:30 / 16:00〜21:00 診療終了の15分前まで 土日祝 9:00〜13:00 / 14:00〜18:00 診療終了の15分前まで 平日は夜21時まで、土日祝日も夕方まで診療を行い、お仕事帰りや休日の急な体調不良でも柔軟な受診が可能です。 発熱外来では、インフルエンザ抗原検査、溶連菌検査、アデノウイルス検査、結核検査、百日咳の検査に対応しています。 新型コロナなどが疑われる場合は、抗原検査を行うこともあります。 治療は、処方薬で症状を抑えながら水分補給と安静を基本とし、高熱が続く場合や細菌感染を合併している場合は抗生剤を使用することがあります。 まとめ 大人が発熱した際は全身を幅広く診察できる内科や発熱外来へ、子どもの場合は小児科を受診することが基本です。 当院では、小児外来でお子さまの発熱も受け付けています。 受診の前に、予約方法と受付終了時刻を確認しておきましょう。受診後は処方薬を活用しながらこまめに水分を補給し、決められた療養期間は自宅で安静に過ごすことが回復への近道といえます。 高熱が続く場合や強い息苦しさなどがあるときは無理をせず、お近くの医療機関や専門窓口へ早めにご相談ください。 参考文献 厚生労働省「令和7年度 急性呼吸器感染症(ARI)総合対策に関するQ&A」 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後の対応について」 総務省消防庁「救急安心センター事業(♯7119)の推進」 東京都保健医療局「新型コロナウイルス感染症にかかる相談窓口について」














